日本でも海洋資源開発のエンジニアリング企業の強化・育成を

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 カーボンファイバーやナノテクノロジーによる素材改良からライザー(泥水循環システム)を使わない原油掘削や海上巨大居住・修理・燃料基地と陸上を結ぶ高速大量輸送手段等の生産様式、海中作業ロボット、海中通信システムひいては海底エネルギー確保など広範にわたる項目に関して、外国企業との共同研究で成果を上げ、その研究成果に基づくシステムや資機材を活用して実際の原油開発を行うという枠組みである。

ゼネラル・エレクトリック(GE)、IBM、ブリティッシュガス(BG)、ハリバートンなど欧米企業で研究拠点をCENPES周辺に開設し、同フレームワークに参加しようとする動きがすでに積極化している。実は、PROCAPの多くの課題項目において日本企業が優れて新技術開発をリードできる潜在機会が多いにもかかわらず、いまだ参加していない。

昨年7月、中国の深海探査船蛟龍号は、3000メートルの東シナ海海底に五星紅旗を打ち立てた。5月には、北京で世界海洋石油ガス探査開発博覧会が開催される。今年4月の伯中両国の間の共同開発および技術協力合意は、まさに双方の技術交流が目的である。海底油ガス田や熱水鉱床など海洋資源開発を国家重要戦略として進める中国に後れをとらずに、わが国が自国のEEZさらに海外の海洋資源開発に関与していくためには、研究レベルの技術や個々のセグメントで比較優位を持つ産業技術を目的別に有機的に再構築し、統合的戦略技術としていく、エンジニアリング機能を強化することがまず重要な課題である。

資源開発のための技術研究とこれを事業化するエンジニアリング機能の国産化は、EEZの戦略的開発に不可欠の要素である。シュルンベルジェ、ハリバートン、KBRといった資源開発のエンジニアリング企業がわが国にないことが、情報仲介と個別技術の目的的な有機的融合が進まない主因であるからである。本邦プラントエンジニアリング企業と造船系のエンジニアリング企業が協力して、こういう新たな役割を担えないものであろうか。

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