北朝鮮に経済制裁しても体制は崩れない

北朝鮮ビジネス手がけるスイス人が語る真実

経済制裁について私が一番言いたいことは、米国も日本も制裁する目的として国家指導層への圧力を言うが、その結果は、圧力にはならない、ということだ。

経済制裁は北朝鮮の庶民を苦しめるだけ

庶民が最も経済制裁の影響を受けることを目の当たりにしてきた。制裁を併行しながらも人道支援は行うとアピールする国もあるが、それは正しくない。実際に、私が進めていた庶民の生活改善につながるプロジェクトがいくつもダメになった。人道的に最も支援が必要な庶民の生活が困り、逆に圧力を与えようとする指導層にはなんら影響がないのだ。まさに人権問題を経済制裁が作り出しているとも言えるだろう。

北朝鮮は今でも核開発プログラムを停止していない。朝鮮労働党のエリートは、海外から高級品を購入しているし、どんな状況でもそれはできる。経済制裁が続けば続くほど、エリートがやっているようなことができない庶民の生活だけが困窮するのだ。

――北朝鮮から逃げてきた、「脱北者」による証言が米国などで広まり、「経済圧力すべし」との声がますます高まっている。日本も拉致問題の解決が遅れ、再び圧力が必要という指摘が増えている。

私も本を出したことでずいぶんな批判を受けている。だが、脱北者の証言は実際に自分が経験したものをストーリー化して、そのストーリーをねじ曲げている。それは、ストーリーが北朝鮮の残酷さをより描くものであればあるほど、メディアの注目を集めることができ、カネが入るためだ。

私の経験からすれば、脱北者はよく嘘をつく。北朝鮮の悪口ばかり言っているように思える。米国などで証言して有名になった脱北者が、その後にウソがバレるケースもしばしばなのは、何をかをいわん、だろう。そして、そんな彼らの“証言”のせいで北朝鮮への経済制裁が厳しくなり、同時に、支援が切実に必要で人道的支援が本当に必要な北朝鮮の庶民の生活がますます厳しくなるのだ。

私が本に書いたことはすべて事実であり、北朝鮮国民の率直・素朴な一面を描いた。それは、北朝鮮の庶民の生活を変えるのは経済制裁ではなく、北朝鮮とのビジネスを通じて互いに未来を切り開くことが大事ではないかと考えているからだ。制裁ではなく、ビジネスで交流することこそ、いろんな問題の解決に役立てると考えている。

フェリックス・アブト(Felix Abt)=スイスのABBグループ社に勤務しながら、欧州やアフリカ、アジアでビジネスを行う。2002年に同社の平壌駐在として赴任。現在はベトナム在住で、北朝鮮の合弁事業も継続して行っている。

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