北朝鮮に経済制裁しても体制は崩れない

北朝鮮ビジネス手がけるスイス人が語る真実

北朝鮮は社会主義を標榜しているものの、資本主義市場にゆっくりと移行しつつある。まだ若いし、ライバルもいない。だからこそ、そんな時期の北朝鮮に進出し、自分たちの位置を強化していく。もちろん、楽しいことばかりではない。だが北朝鮮が今後、対外的な経済関係を広げていくことで、ライバルと比較すれば事業展開がスムーズになるのは間違いない。

――アブト氏自身の北朝鮮ビジネスの成果は何か。

「北朝鮮企業との合弁で立ち上げたピョンス製薬合弁会社だ。米国や日本では、北朝鮮が作っている薬は麻薬しかないと思っているかもしれないが、実は、同社でさまざまな医薬品を製造していた。また、ドラッグストアのような販売店チェーンも構築した。2009年に北朝鮮を離れたが、現在でも同社はビジネスを行っており、北朝鮮で最も信頼されている製薬ブランドになっている。

ピョンス製薬合弁会社がそれなりの成功を収めたのは、海外での経営の知識と経験を生かして、北朝鮮の地場企業よりはよいビジネスを展開できたためだ。特に重視したのが、消費者へのサービス。アフターサービスは特に重要だ。また、顧客への接し方など、私が現場に出て手取り足取り教えていた。サービスのクオリティは、それまでの北朝鮮にはなかったものを提供できたと自負している。

初のテレビCMも手がける

一つ紹介したいのは、ピョンス製薬合弁会社が北朝鮮で初めて、テレビとラジオの両方でCMを出したことだ。社会主義の北朝鮮では、広告は資本主義のツールと見なされ、当時は禁止されていた行為だった。このCMでは「ピョンスアスピリン」を北朝鮮国民に紹介し販路を広げることができた。

――2006年に北朝鮮が核実験を行うなど、北朝鮮の対外姿勢が米国の反発を招き、経済制裁が強化された。日本もそれに拉致問題を取りあげ、独自の経済制裁を行い、現在も続いている。アブト氏の北朝鮮滞在中の出来事だが、現地ではどのような状況だったか。

「経済制裁の影響は本当に厳しいものだった。先ほどのビジネススクールも閉鎖に追い込まれたが、海外からの長期的な投資も難しくなった。既存のビジネスにとっても、たとえば機材や施設の更新もままならなくなる。海外からの専門家を連れてくることも非常に難しい。北朝鮮企業にとっても、海外市場を失うことになった。これは、北朝鮮は“ならず者国家”といったイメージも影響していたことも事実だ。

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