日テレ「ZIP!」の仕掛け人が挑むHuluの奇策 ネット時代にテレビ局が果たす役割とは?
「テレビ放送の宣伝で日本版のラストコップに興味を持った人が、ドイツ版がHuluで配信されていると知って視聴する。面白いと思えば、リメイクした日本版にも興味を持ってもらえるだろう。もしくは、日本版の第1話をテレビ放送で視聴した人が、第2話目以降をHuluで視聴し、同じくHuluで配信中のドイツ版を追体験するかもしれない。テレビ放送とネット配信を連動させることで、新しいドラマの楽しみ方を提供したい」
地上波、ネット、BS、CSという伝送路を回遊させ、一石二鳥どころか一石四鳥のコンテンツ活用を狙うわけだ。放送局の中には、いまだ「ネットが地上波の“客”を奪ってしまうのではないか」という不安が根強く残る。だが、テレビからスマートフォンやタブレット端末へとデバイスシフトが進む中で、やらざるをえないというのが本音かもしれない。
「テレビ離れ」は起きていない?
テレビという受像機が長く家のリビングの中心に置かれてきたことで、テレビ番組は受動的なものとして最も心地よく楽しめる形に進化してきた。
「テレビ離れ」とよくいわれるが、実はテレビ放送の平日の1日平均視聴時間量は2003年の4時間1分をピークに微減程度にとどまる。ここ10年間は3時間40分前後で横ばいを維持している(総務省「情報通信白書」)。
ただ、テレビの見方は変化した。テレビはついているけれども、能動的に視聴する人は減っている。博報堂DYメディアパートナーズの調べによると、「見ていなくても、BGM的にテレビをつけておくことがある」「テレビを見ながら、携帯電話・スマホを触っていることがある」と答えた人は、それぞれ6割を超えている。
スマホでネット検索をした後、ふとテレビ画面に目を戻した時に内容がわからないと、視聴者はその番組から離れてしまう。視聴者のニーズに合わせて、テレビ番組はいつ見始めても何をやっているかがわかるような演出のバラエティや情報番組が多くなった。
「噴くドラマはあるが、当たるドラマを生み出すのが難しくなった」と、ある放送局関係者は嘆く。番組平均世帯視聴率が40%を超えた「半沢直樹」がある一方で、視聴率3%台というドラマも珍しくなくなってきた。第1話から連続して能動的に視聴するドラマは、現在のテレビ放送の視聴形態に合わなくなってきているということだろう。
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