日テレ「ZIP!」の仕掛け人が挑むHuluの奇策 ネット時代にテレビ局が果たす役割とは?
ビデオ・オン・デマンド(VOD)と呼ばれる有料の動画配信サービスはHuluのほかにも、dTV、UULA、Gyao!ストア、U-NEXTなど数多く、すでに日本のVOD市場は乱戦状態にある。さらに、ネットフリックスの日本上陸を今秋に控える。
三枝は「市場規模が一気に広がる機運が盛り上がっている。いい意味で戦国時代」と話す。ネットフリックスが参入すれば、配信プラットフォームはさらに増えることになる。その一方、制作力のある国内のコンテンツサプライヤーは限られる。ラインナップで差別化しようと思えば、調達コストをかけて独占配信の権利を獲得するか、オリジナル作品を制作するしかない。
ただ、今のところ国内では、1話当たり数千万円かかるといわれる制作費を投じてオリジナルドラマ作品を生み出せる資金力を持った配信プラットフォームは、日テレ傘下のHuluと、NTTドコモとエイベックスが合弁で運営するdTVくらい。この2つでさえ、会員数はdTV が500万人超、Huluはようやく100万人を超えたところ。dTVで500円、Huluでも933円という月額利用料の収入だけで、次々とオリジナル作品を制作できる状況にはない。
少なくない共同製作のメリット
そこでHuluは、今秋のネットフリックス上陸を前に、日テレとの共同製作によるオリジナルドラマで迎え撃つことを決めた。
「日テレとの共同製作にすることで、予算規模を大きくできるし、動画配信会社だけではできないスケール感、キャスティングで作ることができる」と三枝は意気込む。
メリットは制作費だけではない。テレビ放送向けとネット配信向け、両者のドラマ制作は「タイムテーブル」の有無による違いもある。放送の場合、予告やCMなどの時間を除くと、1時間の枠の中で正味45~50分がドラマ1話当たりの時間となる。一方、ネット配信の場合、枠を限定されることがなく1話当たりの時間を画一的に設定する必要はない。
「制作者としてはチャレンジのしがいがある。たとえば、この画を使いたいけれども、尺が足りないから編集の段階で泣く泣くカットする。ただ、カットした場面の撮影にも費用は発生しているので、非常にもったいない。ネット配信なら、作品を時間枠に合わせることなく、2~3分の長尺なら問題なくできる」
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