「円安は困りもの」と抑えつつ日銀が促進する矛盾 日本特有、物価と為替の「分業体制」は限界

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日銀は「物価の番人」と呼ばれる。円の価値安定を担いつつ、対外的な価値である「為替」にはノータッチという建前だ。だが、現実には為替と無縁とはいかない。

日銀が金利上昇を抑制するオペを行ったのは、円安に配慮して金利上昇を容認し続けると、早々と上限の1%に到達。金利が固定化して市場機能が低下し、さらなる上限引き上げに追い込まれるのを恐れているからだとみられる。つまり、円安配慮によってYCCがなし崩し的に崩壊するわけだ。そうなると、金融市場はマイナス金利の解除も視野に入れてくる。

日銀としては、物価2%の安定達成が見通せない以上、円安に追われて大規模緩和の解除に追い込まれるのは避けたいだろう。こうした日銀の現行緩和に固執する姿勢が、円安加速の状況を招いている。

物価は日銀、為替は財務省

おりしもアメリカでは原油高でインフレ懸念が再燃し、長期金利は10月3日、4.80%と2007年8月以来、約16年ぶりの高水準を更新している。日米金利差の拡大が続くと、円相場は2022年秋につけた151円台後半の安値を更新し、「155円台までの下げもあり得る」(外資系金融機関)との声も聞かれる。政府は2022年秋と同様に大規模な介入を再び実施するしかない。

以上のように、金融政策と為替政策がかみ合わない事態に陥った経緯を、歴史的な経緯も含めて改めて整理・考察してみたい。

まず、通貨とは為替も含めた概念で、諸外国は中央銀行の一元管理が一般的だ。主要国では欧州中央銀行(ECB)がこれに該当する。日本は、世界的にも珍しいケースだが、「通貨」を対内価値と対外価値に切り分け、それぞれ所管を分離している。対内価値とは「物価」で、これは日銀の所管だ。対外価値が「為替」であり、財務省の所管となる。

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