「円安は困りもの」と抑えつつ日銀が促進する矛盾 日本特有、物価と為替の「分業体制」は限界
日銀の大規模緩和が円安を招き、政府(財務省)が牽制に追われている。本来、金融政策と為替政策は足並みがそろうべきだが、2022年来の円安進行下では、両政策の足並みは乱れ、整合性が取れていない。
日銀は7月の金融政策決定会合で、円安配慮も込めてイールドカーブ・コントロール(YCC=長短金利操作)を柔軟化したが、円安に歯止めがかかるには至っていない。金融・為替を総合した通貨政策の自己矛盾が続くのは、日本特有の金融政策と為替政策の分業体制に限界が来ているからだと考えられる。
150円に達した直後の変動に「介入か」
日銀はYCCの柔軟化に伴って長期金利の変動幅の上限を1%まで引き上げた。以降、長期金利は緩やかに上昇している。10月4日の東京債券市場では0.805%まで水準は切り上がった。
ただ、その過程で日銀は、長期金利の上昇を牽制する国債買い入れオペも行っている。市場では「金利上昇を抑制するオペは円売りを招きかねず、解せない」(外資系ファンド)と疑問視されている。
実際、10月2日にオペ実施を通告すると、翌日にアメリカの経済指標が強かったことも影響し、円は150円台に下落した。その直後、円は一時急騰し、「介入したのではないか、との観測を招いた」(大手邦銀)という。
神田真人財務官は介入の有無について「コメントを差し控える」と言及を避けた。仮に介入したのなら、金融政策に由来する円安を為替政策で阻止する、という通貨政策の自家撞着が生じた格好だ。
こうした矛盾が生じるのは、金融・為替政策を総合した「通貨政策」が単一主体(一般的には中央銀行)で管理されるべきなのに、日本は分別管理となっているからだ。
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