名門・帝国ホテル、皇居外苑で「独り負け」の衝撃 競合は「コロナ前超え」、老舗が陥るジレンマ

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また客室数も帝国ホテル東京の本館570とパレスホテル東京の284と比べると2倍ある。一定程度の稼働率を確保するためには、客室を安価に販売せざるを得ない。

大手宿泊予約サイトで比較すると、予約可能である12月5日から大人2名1室の素泊まり料金は、パレスホテル東京が16万5000円(デラックスツイン with バルコニー)に対して、帝国ホテル東京は8万8000円(本館デラックスツイン)となっている。

アメリカのトランプ前大統領も宿泊したことがあるパレスホテル東京の内観。繁忙期の平均客室単価は10万円を超える(写真:記者撮影)

「全方位戦略」と「特化戦略」で真逆

ただ、帝国ホテルとしてもこうした状況に手をこまねいているわけではない。新規顧客開拓に向けて動き出している。

2023年8月には、帝国ホテル東京の「インペリアルバイキング サール」をリニューアル。フランス料理だけではなく、和食と中華料理の提供を開始した。同ホテルの顧客は2世代、3世代と幅広いため、ファミリー層など多様なニーズに対応をする。

パレスホテル東京は、富裕層インバウンドをターゲットとし、東京會舘は婚礼分野では大型挙式の獲得に注力し、成功してきた。

常連客の多い帝国ホテルが取る戦略は、幅広い顧客を獲得する「全方位戦略」で、両社の「特化戦略」とは真逆といえる。足元では回復が遅れている帝国ホテルだが、全方位戦略で立て直しができるのか。名門ホテルは正念場を迎えている。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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