サッカーの神様に試されたJリーグチェアマン 元リクルートのサッカー素人がJリーグを経営
それがある日突然、Jリーグのチェアマンという仕事に就いた。
周りはまったく見知らぬ風景でほとんど知り合いがいない。周囲もほとんど私が何者なのかを知らない。彼らは日本語を話してはいるのだが、何を言っているのか意味がよくわからない。
顔には「Who is Murai?」と書いてある
私はまるで荒野にポツンと立っている案山子(かかし)のような存在だ。虚勢を張って胸を反らして立ってはいるのだが、カラスに怯えて、足が少し震えているようだ。多くのサッカー関係者をカラスにたとえては申し訳ないが、飛んでくるカラスは私のことを上から下まで品定めする。
54歳になってはじめて転校生になった気分だ。転校生は新しい学校に通う前日は眠れなかったのかもしれない。「友だちができますように」とこっそり布団の中で祈っていたのかもしれない。もっと優しくすべきだったと、今さら反省してももう遅い。私の周りを取り囲むカラスの顔にはWho is Murai?と書いてある。
無理もない。村井って何者? と思う人間がいて当然だろう。
1993年5月15日、Jリーグは川淵三郎初代チェアマンの強力なリーダーシップのもとで幕を開けた。社会現象とまで言われた華々しいプロサッカーリーグの誕生から数えて2023年には30周年を迎えた。
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