東芝は「高学歴依存」から今度こそ脱却できるか 「デジタルがわかる初めての社長」への期待

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かつて、「野武士の日立」「公家の東芝」と呼ばれた時代があった。無骨な感じの日立製作所に対し、東芝のどことなくおっとりした企業文化を表現した比喩といえよう。もっとも、東芝は日立と同様、メーカーなので工場など多くの現場労働者を抱えている。

ところがその一方、経営層や中間管理職に目を向けると高学歴の従業員が目立つ。東芝は石坂泰三氏、土光敏夫氏(いずれも経団連会長)、岡村正氏(日本商工会議所会頭)を輩出してきたことから、この印象をさらに強いものにした。まさに東芝は、日本を代表する名門大企業だった。

1990年代まで東大・東工大卒の社長が続いた

東芝のトップには東京大学や東京工業大学の出身者が就任していたが、潮目が変わったのは、慶應義塾大学経済学部卒の西室泰三氏が1996年に、社長に就任したときからだった。同社としては初めての私立大学文系出身の社長である。

その後、後継者となった岡村正氏は東大法学部卒だが、相変わらず西室氏が実権を掌握した。同氏が高く評価していた後継社長の西田厚聰氏は、早稲田大学政治経済学部を経て、東大大学院法学研究科に進み、イランの現地法人に入社し、31歳で本社に入社した。過去の東芝では考えられない異色と言える経歴だった。

9電力会社が最大得意先である東芝らしいエピソードを西田氏から聞いたことがある。

「西室会長に、経歴には早稲田卒、東大大学院修了のどちらを書いたほうがいいでしょうか、と相談すると、『早稲田卒と東大卒双方のお客さんと縁ができますから、両方とも書いておけばいいでしょう』とアドバイスを受けました」

西田氏の後任になったのが、西田氏と確執が深まっていった佐々木則夫氏。早大理工学部卒である。続く田中久雄氏は神戸商科大学(現兵庫県立大学)商経学部卒、室町正志氏は早大理工学部卒と、脱「東大・東工大依存」が図られているかのように見えた。

ところが再び、綱川智氏(東大教養学部卒)、外部から登用された車谷暢昭氏(東大経済学部卒)と東大卒が続く。車谷氏が突然退任に追い込まれ、綱川氏が再登板する。

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