東芝は「高学歴依存」から今度こそ脱却できるか 「デジタルがわかる初めての社長」への期待

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

平井一夫前CEOがエンターテインメント畑出身だったことから、その手腕が注目されたが、盛田氏が大きな時代の変化を見通す先見性を発揮し、ソフトがわかる歴代CEOが着々と地歩を固めてきたからこそ、平井氏が果実を手にすることができたのだ。

では、東芝は「デジタルがわかる会社」へ転換するための下地づくりが長い年月をかけて行われていたのだろうか。

東芝は約150年にわたり、 発電などのエネルギー事業、水処理などのインフラ事業、社会・情報インフラ事業に携わってきた。今、エネルギーやインフラの分野では、再生可能エネルギーの普及やインフラ老朽化への対応などが求められている。東芝はここでデータの力を生かそうとしているのだ。

一方、経営危機に直面し、虎の子だった医療機器や半導体メモリーなどの事業を次々と売却、分離してしまった。こうした中で、「残された事業で何ができるのか」と危ぶまれる声も聞かれるようになったが、残された事業にも、POS(販売時点情報管理)のように大きな市場シェア(日本:約50%、海外:約20%)を占めている強いインフラ・ビジネスがある。スマートフォンと連動することで、データを活用した新たなビジネスモデルが構築できそうだ。

デジタルの波を「感知」するのが遅れた

ただ、悔やまれるのは、なぜ、もっと早くデジタルの大きな波を「感知」し、自社の強みを「捕捉」しなかったか、である。そして新規事業を立ち上げ主力事業に育てる「変革」をもっと早い段階から手を打ってこなかったのか。

ソニーに比べれば、東芝にリロケーションの下地はあったものの、具体的にビジネスモデルとして構築しようとする動きは見られなかった。サイバー技術とフィジカル技術を融合した「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」と称し、やっと全社的に重い腰を上げたのは、退任に追い込まれた車谷暢昭前社長の頃からだ。

74年ぶりに非上場化するというコーポレートガバナンスの抜本的変化に伴い、既存の宝の山にすがる重い腰の企業文化も、世の中の大きなうねりを敏感に感知、捕捉し、素早く動き変革できる企業文化に大きく変わるかもしれない。その象徴の1つとして想定されるのが「脱高学歴」である。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事