可部線、特異な経緯たどった路線「廃止区間」の今 利用多い一部が鉄道復活、バス路線の現状は?

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可部地区は広島市安佐北区の中心地で区役所もある。広島市の都市構造は特徴的で、太田川河口の平坦な三角州上に広がる古くからの市街地に対し、高度経済成長期以降、不足する住宅地は周囲の山地を切り開いて造成されてきた。中心部との間は、主に路線バスによって結ばれている。

安佐北区は旧可部町をはじめ、都市圏の拡大によって広島市に編入された地域だ。旧可部線に近いところでも、虹山団地、勝木台、ふじビレッジといった丘陵地の住宅街がいくつも開かれており、縦貫する国道191号には広島交通バス、広島電鉄バスが多数、運行されている。バスの機動力を活かして住宅地の中へ入り込む系統も多い。広島電鉄バスの広島バスセンター―三段峡間の路線も、飯室まではそちらを通る。

大規模医療センターに隣接

しかし可部線は、戦前からの計画通り太田川の狭い谷に建設された。そのため住宅地開発から取り残され、通勤通学需要が取り込めなかった。

例外が可部―あき亀山間。広島市はあき亀山駅の隣りに広島市立北部医療センター安佐市民病院を建設し、JR西日本も広島―可部間の列車をすべて、あき亀山まで延長して、需要に応えている。まだ新しい駅と病院、最新型の227系電車の取り合わせには、可部線廃止区間の面影はない。

あき亀山駅前
あき亀山駅前の広島市立北部医療センター安佐市民病院とバスターミナル(筆者撮影)

あき亀山駅前にはバスターミナルも設けられ、可部―安芸飯室間で可部線を代替する広島交通バス宇津・可部線も乗り入れる。だが、発着する系統の大半は周辺の住宅地と病院を結ぶ系統である。備北交通も安芸高田市方面から来る。こうした大規模病院は、かなりの長距離路線も含めて、どこの地域でも公共交通機関の拠点でもある。主要な利用客層がうかがえる。

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