可部線、特異な経緯たどった路線「廃止区間」の今 利用多い一部が鉄道復活、バス路線の現状は?

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加計中央からは12時51分発に乗り、三段峡には13時18分着。470円。途中、旧殿賀駅前に位置する安芸太田病院を経由する。ここもコミュニティバスのターミナルになっていて、病院玄関前と名乗るバス停もあるが、広島電鉄バスは国道上のバス停に発着する。

加計―三段峡間は日本鉄道建設公団が手がけた、高架橋やトンネルを多用した工法で建設された路線で、正直なところ、時代性もあって駅のバリアフリーの考え方は皆無。長い階段を上り下りして列車に乗るより、道端からバスに乗る方が、高齢者にとってはるかに楽との結論は自明だった。

気になっていたのが、戸河内インターチェンジバスセンターを名乗る停留所。バス停自体は、待合室や屋根を完備しているのは立派だが大きな特徴もない。

安芸太田町役場前付近を走るバス
安芸太田町役場前付近を走る広島バスセンター行き(筆者撮影)

ただこのエリアは、中国自動車道戸河内インターチェンジに隣接した道の駅「来夢とごうち」を中心に、ホームセンターや飲食店、産直市などが集まる、安芸太田町の玄関口として整備されていたのであった。可部線の旧上殿駅のすぐ近くで、太田川を渡る橋梁も残骸をさらしているが、身の丈に合わせて、鉄道ではなく自動車・バスを地域の中核交通機関と位置づけた結果、成立した、象徴的な施設と受け止める。

高速バスも重要な交通手段

地域輸送の上では事実上の終点であったのが戸河内だ。バス停名は安芸太田町役場で、乗っていたバスも、私以外、全員降りる。ここには役場などの公共施設が、駅跡地も活用して集まっている。バス停にも立派な待合室があり、先述の三段峡線のほか、1日2往復ながら石見交通の新広益線(広島駅新幹線口―益田駅前間)も立ち寄る。これも、広島方面との往来に利用できる高速バスだ。

三段峡バス停
駅跡に整備された三段峡バス停(筆者撮影)
広島バスセンターと三段峡を結ぶ高速バス
広島バスセンターと三段峡を結ぶ高速バス(筆者撮影)

戸河内を過ぎると、人家も稀になる。三段峡は観光地最寄り駅で、小さな集落があるだけだ。渓谷の入り口にあった駅跡に、待合室もあるバス乗り場が整備されていた。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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