大阪万博会場・夢洲の「野鳥の楽園」が喪失危機 渡り鳥が飛来する湿地を埋め立てリゾート開発

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大阪府と大阪市は2017年に「夢洲まちづくり構想」を、2019年に「夢洲まちづくり基本方針」を定めた。それによると、夢洲は国際観光拠点として位置付けられ、万博のウォーターワールドエリアの跡地は埋め立てられ、長期滞在型リゾートのホテルなどが建つ予定だ。

2020年11月の撮影時、ホシハジロなどが水辺で羽を休めていた。後ろにペーパードレーンを打ち込む工事用機械が見える(提供:大阪自然環境保全協会)

大阪港湾局営業推進室・開発調整課の松田克仁(かつひと)課長代理は、現在も続く固化・地盤改良工事について「まず表層から1.5mをセメント系の固化剤で固めてから、地盤改良工事を行うことで、柔らかい浚渫土砂が比較的固い地盤になって土地が使える状態になる。ウォーターワールドエリアの水を張る場所は固化を終えた段階でいったん作業を止めますが、結果的に、底なし沼のような状態はなくなり、万博の来場者が誤って落ちても安全性が確保されます」と話した。

また、松田課長代理は「環境アセス手続きでの市長意見は、あくまでも夢洲まちづくり構想、方針による土地利用方針を踏まえてもの」とも強調した。つまり万博の期間中には、ウォーターワールドの一部に湿地を回復させるなど生物多様性や生態系保全に配慮した方策がとられるとしても、万博終了後の土地利用方針は変わらない、というのだ。

なぜ夢洲で湿地を維持・創出することが重要なのか

英国に本部がある国際環境NGO・バードライフ・インターナショナルは今年7月、万博協会と大阪市に対し、大阪湾に残された湿地環境の保全と回復のためにあらゆる手段を講じるよう求める書簡を送った。

シギ、チドリは、繁殖地であるロシアやアラスカと越冬地の東アジアやオーストラリアを行き来する渡り鳥。渡りの中継地としての大阪湾の重要性は一目瞭然だ(下図)。またバードライフ・インターナショナルの書簡は「シギ、チドリの個体数は著しく減少している」と強調している。

大阪湾に飛来するシギ、チドリのフライウェイ(環境省の委託を受け、山階鳥類研究所がまとめたシギ、チドリ類の追跡事業報告書=平成22年度、平成23~令和3年度=をもとにバードリサーチが作図)

日本の状況をみると、2006年に専門家が書いた論文にはすでに「シギ・チドリ類は最近20年間で少なくとも4~5割が減少した」とある。環境省が市民や環境団体の協力により行っている調査「モニタリングサイト1000」のデータによると、その後も減少は続く。

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