トヨタが「水素社会の実現」を諦めない本当の理由 単に「MIRAI」を売りたいから、ではない必要性

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商用車での水素活用への取り組みは、すでに始まっている。燃料電池小型トラックを用いた実証実験は行われており、大型トラックの開発も進んでいる。トヨタは日野自動車と共同でFC大型トラックを開発し、今年5月の富士24時間レースでCJPTとの共同出展のかたちでお披露目。そして5月から、アサヒグループ、西濃運輸、NEXT Logistics Japan(NLJ)、ヤマト運輸の4社で、この車両を用いた走行実証が始まっている。

日野自動車と共同開発したFC大型トラックの走行実証も始まっている(イメージ写真:トヨタ自動車)

物流に水素が活用されるようになれば、水素ステーションはある程度の頻度、そして量の稼働が保証される。実は現在の水素ステーションの大きな問題の1つに、いつどれぐらいの需要があるのか見えないことがある。

商用車は多くの場合、運行スケジュールが決まっているので、どこのステーションにどれだけの水素を用意しておけばいいのか把握しやすくなる。こうなれば、新たな水素ステーションの設置も需要ベースで考えられ、インフラ充実にもつながっていくことになる。

行政と一体になった水素利活用を推進

それを踏まえたうえで、7月に大分県のサーキット、オートポリスで開催されたスーパー耐久シリーズのパドックでは、新たな施策が明らかにされた。福岡県でスタートしたB to G、すなわち行政と一体になっての水素利活用の取り組みだ。

核となるのは市民生活を支える車両のFCEV化。福岡市の小中学校ではすでに給食の配送用トラックとしてFCEVが使われているが、さらに救急車、医療車、ゴミ収集車、公共交通などもFCEV化していくのである。

FCEVのBEVに対する大きなメリットは水素充填にかかる時間が3~5分程度と非常に短いことだ。BEVは充電中ダウンタイムとなるため運行管理が大変で、それこそ救急車のような車両に使うのは難しい。

県庁や市役所などに水素ステーションを作り、こうした車両をFCEV化していけば、水素が安定して使われる土壌となる。また、近日登場予定の新型「クラウン セダン」にはFCEV仕様も設定されるから、公用車としてこれを使ってもらうというアイデアも、すでに打ち出されている。

「クラウン セダン」にはFCEV仕様も設定されている。公用車として導入する地方自治体が出てくることが予想される(撮影:尾形文繁)
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