トヨタが「水素社会の実現」を諦めない本当の理由 単に「MIRAI」を売りたいから、ではない必要性
クロスオーバーに変身したクラウンに新たにセダンを用意する意図は、まさにそこにあったのかと考えるとさすがトヨタらしいしたたかさだ。今、地方自治体がセンチュリーのような“高級車”を運用していると叩かれるというおかしな風潮もある。地域社会への貢献にもつながるという名分が立てば、FCEVクラウンの導入に文句など出ないだろう。
また、FCEVのゴミ収集車にはCO2低減だけにとどまらないメリットがあるという。福岡市ではゴミ収集を夜中に行っている。従来のエンジン車では走行だけでなく架装部分もエンジンで動かしているため騒音が小さくない。FCEVゴミ収集車は、これらも電動化していることから動作が非常に静かで、安心して運用できる。
このFCEVゴミ収集車は今年度、福岡市で1台の車両で実証実験を行うという段階だ。しかしながら、すでに多くの自治体から引き合いがあるという。
こうしたかたちでの水素の活用は、脱炭素への貢献が求められている地方自治体にとっては、有力な選択肢となり得る。トヨタはB to G、すなわち相手を県や市などと見据えて、水素利活用のパッケージとして提案していくかたちで進めていくとしている。
“水素欠”対策にJAFと給水素車を開発
9月に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されたスーパー耐久シリーズ第2戦で、トヨタはJAFとともに開発した給水素車を公開した。渋滞などさまざまな理由で“水素欠”となって路上に停止してしまった車両に、水素を充填するための車両である。
これがエンジン車なら燃料を運んできて給油すればまたすぐに走り出せるが、FCEVではそうはいかない。現状ではレッカー車で運ぶしかないというが、この給水素車があればその場で充填が可能。行われたデモでは、ものの数分で200km近く走行できるだけの水素を充填することができた。
同じように“電欠”となったBEV向けには、すでに充電車が稼働し始めている。しかしながら充電には時間がかかるため、それなりに時間をかけても高速道路なら次のPAに行けるだけの最低限の電気を供給するだけにとどまる。水素ならば、短時間での救助が可能になる。
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