「損得ばかりを常に考える人」が見失う大事な視点 「易経」から考える"本当の幸せ"とは何なのか

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『易経』の準備した問いに対して自問自答する習慣をつければ、これから起こることに対してあらかじめ準備ができます。そうすれば、紀元前以来の先人たちと同じ失敗を繰り返すことがなくなるとともに、先人たちが獲得した成功パターンも再現できるようになります。

歴史上でも、『易経』に学んだ先人たちが周りの人々を幸せに導き、それを通じて幸せな人生をまっとうしました。『易経』は名言やたとえ話が豊富なので、指導者として「幸せとは?」といった抽象的な考えも人に伝えやすくなります。

ここでは、その教えの中から、人生に役立つ心得を1つお教えしましょう。

●山沢損(さんたくそん)
……損して得取る時。自分の得た分を減らしてでも、他人の分を増やすことを考えよ、の意。
翻って「今の損を未来の得につなげるなど、長期的視点を持とう」

これは「損」の徳について語ったものです。ここから西郷隆盛の有名なセリフを思い出します。

「命もいらぬ、名もいらぬ、官位や肩書きも金もいらぬ、という人は扱いづらい。だがこのような扱いづらい人物でなければ、困難をともにし、国家の命運をかける大事を一緒に成し遂げることはできない。でもそういった人物は、なかなかお目にかかれない。真に道理を行う、正しく生きるという覚悟が必要だからだ。」(『西郷南洲遺訓』より筆者要約)

「世のため人のため、命も名も捨て、金も欲しがらず」という生き方は素晴らしいです。が、その実行には勇気がいります。自分が損するのではないか……と心配になるからです。

損とはどんなことを指すのか

改めて「損」とは何でしょう? お金に置きかえれば分かりやすいでしょうか。

お札は紙とインクでしかありません。そんなものを皆が欲しがるのは、経済活動を通じてほかのものと交換できるからです。

つまり、お金の価値とは「交換価値」です。より大きなお金があればより大きな価値のあるものと交換できる。だから、より多くのお金を皆が欲しがる。ここにこそ、「お金を欲しがること」の根本的な問題があるのではないでしょうか。

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