のぞみ、繁忙期の「自由席廃止」が支持された理由 新幹線の座席トラブルはネット炎上の定番ネタだ
読者の多くがそうだろうが、筆者もまた、国内旅行が好きだ。コラムニスト・ネットメディア研究家が本職ではあるが、地域情報サイトで観光分野などを担当していたことから、国家資格の「国内旅行業務取扱管理者」も持っている。
だからこそ、新幹線が「旅の一部」ではなく、「移動手段」としての色彩を強めていくのだとすれば、少しさびしく感じる。
新幹線の「新たな活用法」
とはいえ、新たな可能性にも期待している。9月18日には「新幹線プロレス」が、プロレス団体によるツアーとして、のぞみ号の1両を貸し切って行われた。車内で試合を繰り広げるもので、75席のチケットが30分ほどで完売した、と報じられている。
JR東海は昨年、旅行会社JTBとの連携により、東海道新幹線の「貸切車両パッケージ」を発売した。コロナ禍によってビジネス需要が伸び悩むなか、新幹線の「新たな活用法」を提供し、「移動を『手段』から『コミュニケーション空間』として目的化し、記憶に残るコミュニケーションの創出を目指す」との思いが込められたサービスだ。報道によると、「新幹線プロレス」も同パッケージを活用して行われたという。
今回、一部シーズンでの全車指定席化が決まった。もし繁忙期で好評ならば、通年での適用に移る可能性もある。どの列車も「のぞみ=全車指定席」「ひかり・こだま=自由席あり」となれば、乗客にも伝わりやすい。運用を統一させたほうが、混乱も生じにくくなるはずだ。
でも、ふらっと旅に出たいときもある。なるべくなら避けたいが、突然の訃報を聞いて、きっぷを慌てて買うこともあるだろう。そんなとき、「自由席」が選択肢にあると、安心できる。たとえ乗り遅れそうでも、ゆっくり次の列車を待てばいい。
このところの観光産業では、あらゆる公共交通機関を、デジタル技術を用いて、ひとつのサービスとして扱う「MaaS(マース、Mobility as a Service)」の考え方が普及しつつある。スマホアプリなどで、複数の列車やバスが、ワンストップで予約・支払いできる恩恵は計り知れない。
その利便性はわかっているのだが、筆者のように「旅行は非日常を楽しむものだ」と考える向きには、せめて旅先では分単位のスケジュールから距離を置きたい、と感じる場面がある。非効率に見えるかもしれないが、「遠回り」もまた、旅行では一興。そこに加わるスパイスとして、これからも「自由席」には、お世話になりそうだ。
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