インドネシアの「個人商店」に起きている劇的変化 小売業界に変化もたらすスーパーアプリの正体

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まず、多層化したサプライチェーンには中間業者が多く存在しているため、それぞれの業者が利益を得ることで、最終消費者が支払う小売価格が高くなる。また、多くの中間業者が介在することで、商品の品質管理が難しくなる。

結果として、品質の劣化や偽造品が市場に出回るリスクが高まる。さらに、多層化したサプライチェーンでは、物流の手間が増えるため、非効率であることに加えて、環境への負荷も高まる。

これらの問題はインドネシアのみならず、多くの新興国で深刻な社会問題となっている。もちろん、大手商社が小規模な中間業者をバイパスし、効率化したサプライチェーンを作ればいいのだが、多くの場合、こうした試みは失敗に終わっている。その理由の1つは、中間業者が既得権益を手放そうとしないことである。

また、パパママショップの在庫データや発注データは一元的には管理されていないことも、受発注や配送の共有化などを阻害する要因となる。

タバコメーカーが起こそうとしている変革

では、どのようにすれば多層化したサプライチェーンの改革を進めることができるのだろうか。そのためには、既得権益を打破するためのビッグデータを収集することが必要となる。

そうした企業の1つがジャルムグループ(Djarum Group)というタバコメーカーである。同社は、タバコ製造以外にもインドネシアを代表する銀行であるBCA銀行を保有し、不動産開発や家電の製造なども行っている。

また、ジャルムグループは、ブリブリミトラ(Blibli Mitra)というパパママショップ向けEコマースの運営もしている。パパママショップのオーナーは、アプリを使って在庫管理や発注管理をすることができる。ブリブリミトラでは、肉や冷凍食品、飲料や野菜など、幅広い商品を取り扱っている。

ポイントは、ジャルムグループがブリブリミトラを運営しているため、パパママショップは近隣の小売店や卸売業者から商品を購入する必要がなくなることだ。アプリを使うことで当然、データも一元管理できる。ジャルムグループとしても、パパママショップの品切れを減らすことで機会損失を減らすことにつながる。

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