高齢者に牙をむく!「子どもの貧困」の実態 先鋭化する特殊詐欺の風景

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

彼らの根底にあるのは、貧しかった自らの生い立ちと、長じてからも努力が成功に決して結びつかないという強い閉塞感。たとえばこんなケースだ。

事例・ワンコイン児童

現在19歳だというM君は、最近詐欺のリクルーター(人材斡旋者)をしている先輩から、誘いを受けている。日当の出る研修を受け、使い物になるようならば「月給50万円保証+歩合(詐欺の成功額の15%)」をもらえるプレーヤーに。この候補から外されれば「日給5万円保証+歩合(詐欺の成功額の3%)」のウケ子(集金役)になるという条件。すでに引ったくりで少年院を経験し、退院から1年経って保護観察も取れた現在は、建築の型枠職人をやりつつ、仲間内で建築系工具や自動車などの窃盗の「バイト」をしているというM君。その生い立ちは、「ワンコイン児童」だった。

M君には父親の記憶はない。ひとりっ子で、小学校時代は母親とアパートでの2人暮らし。毎日深夜に帰る母親は自炊をいっさいしなかった。M君は小学2年生の頃から、毎日母親からもらう500円玉1枚で食いつないだ。

ワンコインの夕食代を使って食べていたのは、コンビニの肉まんや駄菓子。夜遅くまでゲームをするかテレビを見ているため、朝に起きられず毎日遅刻で、給食を食べるために学校に行くという生活。500円はなるべく使わないで、貯めた金でゲームソフトを買っていたために、年じゅう腹を空かせていた。母親が不在がちであるゆえに学用品などもそろわないことがあり、体操服や書道道具もなかった。書道のある日は学校をサボった。

同級生からイジメを受けるようなことはなかったが、明らかに浮いていたという自覚はある。

「お前んとこは自由でいいな」と言われることもあったが、小学生にとって独りきりの夜は長かった。兄弟でもいればまだしも、ひとりでゲームを続けるのは寂しいというより、飽きるし、腹は減るし、退屈だった。

そんなある夜、万引きでもするかと夜中にブラブラしていたところ、自販機前の明かりにたむろする隣の学区の小中学生と行き合ったのだという。小学5年生の時のことだった。

全員が喫煙をしており、初めは「狩られる」と思った。案の定絡まれた結果、「なにお前、チャリ(自転車)乗れないの? じゃあ教えてやるよ」という話になった。実はその年まで自転車の乗り方を教わったこともなく、自分の自転車も持っていなかった。ほんの数時間で自転車に乗れるようになり、さらにその夜に無施錠の自転車を窃盗。なぜか全員で隣町まで自転車で遠征し、集団万引きをしたのだという。

次ページ500円があっただけ「まだうちはマシだった」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事