高齢者に牙をむく!「子どもの貧困」の実態 先鋭化する特殊詐欺の風景

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

毎日つるんで遊ぶのは、8人のグループ。M君より年下もいれば、すでに中学校に上がっている先輩もいたが、それぞれの家のことなども自由に話した。服を買ってもらえない子。週に1度しか親が家に帰ってこない子。電気代を滞納しがちで、年じゅう家が暗闇という子。家に帰ると殴られるという理由で、小学校4年生の頃から家出をしては連れ戻されて殴られるという子もいた。

毎日の500円があっただけで「まだうちはマシだったんだ」とM君は思ったという。

「自分自身の家もなんかヤバいって感じはしてたけど、普通の家の同級生にそんな話できない。けどその友だちになら普通に話せた。友達……っていうより兄弟ができた!って感じですね。中学3年生までは毎日そいつらとつるんでたから、実際家族とかより一緒にいる時間長かったし」

富める者への敵意と自らへの追い込み

中学時代は、その「週に1度しか親が帰らない」友人宅に5人ほどで住み込み、自販機を破壊しての釣銭窃盗、海水浴場の駐車場で車上荒らし、スクーター盗とやりたい放題をした。中学卒業後は「高校行けなかった組」でつるみ、いつしか近隣の同じような境遇の少年のつながりで数十人規模のグループになっていた。

仲間内には、ヤクザになった者、ホストになった者、バンドをやっている者、そして詐欺に従事している者。そんなつながりから今回の詐欺のリクルートを受けているM君だが、話を受けるかどうかはまだ五分五分だ。

「ウケはハイリスクなバイトですけど、モシモシ(プレーヤー)は1回やると、目つきからして変わっちゃうんですよ。結局、俺らみたいにガキの頃から荒ぶってなくても、高校行けたヤツも、大学まで上がったヤツも、稼いでるとか努力が報われたとかの話は全然聞かない中で、詐欺周りのヤツだけがダントツで羽振りいい。それで『詐欺は頑張ったら頑張っただけ結果がある。捕まったらロング(長期刑)食らうけど、そのリスク込みで1年で一生分稼ぐ』とか真顔で言うんで。ちょっとカッコイイと思う半面で、意識高すぎで痛い感じもするし、『俺たちはお前らとは違う』って感じが鼻につくときもある。俺だって金持ってのうのうと暮らしてるジジイババアについては、こいつら金持ってても使い切んねーだろうから取っちゃってもいいんじゃね?って思うけど、やるならやるで本気で腹据えて取れるかぎり取り尽くすぐらいで行く。じゃないと、その先輩にも簡単には返事できない感じなんです」

今はまだ逡巡の中にあるM君だが、これまで取材に応じた現役詐欺プレーヤーたちは、その逡巡を突き抜けた者たちだ。親の経済的事情で大学を卒業できなかった者、中学卒業後に「出社と同時にスクワット100回」というブラックな営業代行会社を経験した者、M君同様に少年院を経験し、その中でスカウトを受けた者。同級生の親や祖父母に生活保護受給者が何人もいるという「地域そのものが貧困」なエリアの出身者もいた。カバンの中に、中学生用の学習参考書を忍ばせていた20代もいた。

次ページ子どもの貧困は今に始まったことではない
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事