安倍派の新体制、分裂回避優先の「その場しのぎ」 "下村外し"主導で、「森派への先祖帰り」も

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そうした中、5人衆の中で参院を仕切る世耕氏は9月3日の地方講演で、来秋の党総裁選で安倍派として岸田首相の続投を支持する考えを明言。その理由として、岸田首相が故安倍氏の進めた防衛力強化や経済政策を引き継いで実行していることを挙げ、「路線をしっかり引き継いでいる。それをさらに伸ばしていくのであれば、再選してもらいたいというのが派のコンセンサスだ」と述べた。

さらに世耕氏は、安倍氏の後任会長を決めるには数年が必要だとの判断を示したうえで、「私も目指したい」と意欲を表明。派内の約4割は参院議員だとして「会長選挙をしたら私になるが、なかなか選挙というわけにはいかない」と語った。

小泉進次郎氏の「後継会長」説が波紋

これに先立ち、8月28日発売の「週刊ポスト」が安倍派の後継者争いで、森氏が、小泉進次郎氏を後継会長に据えるための派閥入会を画策している、と報じたことも派内外に波紋を広げた。

進次郎氏は清和会の元会長・小泉純一郎元首相の次男で「安倍派入りも不思議ではない」(自民幹部)とされるが、政界入りしてから無所属を貫き、故安倍氏とも距離があったとみられている。このため安倍派幹部も「後継会長が決まらないからといっても、進次郎氏だけはない。会長なんてなったらそれこそ派が分裂する」と真っ向から否定した。

ただ、「進次郎後継会長説が話題になること自体が、安倍派の混乱を象徴している」(自民長老)との指摘も多い。岸田首相が来週にも断行する党・内閣人事でも、党・内閣で要職を占めている「5人衆」について、「松野、萩生田、西村3氏の相互入れ替えなど大きく配置が変わる」(自民幹部)との見方も出る。このため、「人事を通じて、政権内での安倍派の存在感が薄れるのは確実」(自民長老)との声も広がる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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