高次脳機能障がいからの運転復帰を支えるホンダ 医療機関向けドライビングシミュレーターとは

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取材は、本田技研工業の狭山製作所狭山工場で行われた
取材当日の筆者。取材は本田技研工業の埼玉製作所狭山工場で行われた(筆者撮影)

早速、DB型Model Aの開発を担当した小野浩さん(本田技術研究所 先進技術研究所 安全安心・人研究領域 協調安全Gr.)に話を伺った。

DB型Model Aの開発背景について

新型ドライビングシミュレーターDB型Model Aの全景
新型ドライビングシミュレーターDB型Model Aの全景(筆者撮影)

「我々が手がけるドライビングシミュレーターは、いわゆるエンターテインメント向けではありません。運転再開に必要な情報を細かく数値化し、第三者にわかりやすいデータとして示す、このプロセスに特化したシステムとして構築しています」と開発の意義を語る。

筆者も実機に触れてみた。手足で操作するステアリングやペダル類に実車の部品をそのまま使っているため臨場感があった。さらに画面にしても非常に凝ったグラフィックだから、レーシングシミュレーターのようなリアルな車両挙動を画面の中に期待してしまう。

ステアリング
DB型Model Aのステアリング(筆者撮影)

でも実際には、ステアリングの中立付近に存在する実車ならではの落ち着き感はない。操舵力もかなり軽く、スッと動く。そして切り込んだ際の反力もほとんどない。ペダルには若干の反力があるが、実車と比較すれば軽い。

小野さん曰く、「無作為に発生する画面の事象に、被験者がどのタイミングで反応したかを正確に見極めるために必要なセッティングです」という。総合のりものメーカー「ホンダ」ならではのこだわりだ。あくまでも検査機器として成り立っているドライビングシミュレーターであることが理解できた。

DB型Model Aの特徴や開発について

●一般的にシミュレーターでは得意/不得意の分野があると言われるが、DB型Model Aはどこが特徴か?

「高次脳機能障がいによって引き起こされる代表的な症状がいくつかあります。今回発売した運転能力評価サポートソフトを実装したDB型Model Aでは、これらの症状を実在の車両パーツを用いた運転環境で検出しやすくしています」という。

DB型Model Aのシフトまわり
DB型Model Aのシフトまわり(筆者撮影)

全日本指定自動車教習所協会連合会が2019年4月にとりまとめた報告書によると、高次脳機能障がいで患いやすい症状のうち、漫然としてしまう「注意障害」の発生率は群を抜いて高いが、これは従来から行っている机上の神経心理学的検査でも発見しやすい。つまり、ドライビングシミュレーター検査でなくともわかるのだ。

一方で、自身が意識している反対側、たとえば右側に気を取られてしまうと、視野におさまっている(≒見えているはずの)左側の事象に気づかないことがある。

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