これは「半側空間無視」と呼ばれ神経心理学的検査では検出できない。半側空間無視は、実際の運転環境で事故につながりやすいとの報告もあり、ドライビングシミュレーター検査での確実な検出が求められている。
半側空間無視についてDB型Model Aでは、画面上にランダム表示される赤/黄/青の丸印に対して、アクセル/ブレーキ/ステアリングの各操作がいつ、どのように行われているかを見極めることで効果的に検出できるという。
●実車の運転操作に近づけるため、将来的にはどんなHMI(Human Machine Interface/人と機械の接点)が考えられるか?
「実車に近づけることは大切ですが、同時にシミュレーターでの運転操作をそばで見て判断する作業療法士にとっても扱いやすくなければなりません。よって、運転操作全体が俯瞰しやすい環境(≒システム設計)であることが重要です。ステアリングをまわす際に上半身が必要以上に動いていないか、右側の画面ばかりに気を取られて左側を無視していないかなど、プロセスの可視化につながるHMIの開発が重要だと考えています」
新型ドライビングシミュレーターの取材を終えて
大前提として、人生をまっとうするまでの「平均寿命」と、日常生活が自身の力だけで送れる「健康寿命」とはわけて議論すべきだが、いずれにしても日本は65歳以上の人口が全人口の21%以上を占める「超高齢社会」となって久しい(2021年10月時点で28.9%/令和4年度版高齢社会白書より)。
それに比例して65歳以上の高齢者、75歳以上の後期高齢者が自動車の運転を行う割合も増えている。また、進行具合は人それぞれだが、認知症の疑いのある人が自動車を運転してしまう、もしくは運転免許証の更新に臨む事象もある。
こうした現状に対し事故抑制を目的に、警察庁では75歳以上の人が運転免許証を更新する際、「認知機能検査」の受講を義務づけた。また、75歳以上の人で一定の違反歴がある場合には「運転技能検査」に合格しなければ運転免許証の更新ができないとする法文が2020年に施行された改正道路交通法に織り込まれている。
一方で、今回の取材テーマである高次脳機能障がいを有する人の運転再開ついては、超高齢社会とは異なる課題がある。一口に高次脳機能障がいといっても症状はさまざまあるからだ。
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