ホンダは、「実車では(体験)できない危険を安全に疑似体験し、危険予測能力を高める」教育機器が必要だとして1996年からシミュレーターの販売を行う。きっかけは、同年に施行された改正道路交通法による「運転シミュレーター経過措置」の廃止までさかのぼる。
製品としての皮切りは、二輪車の教習所向けに開発した搭乗型のライディングシミュレーター「RA型」。続く2001年には改良版として汎用性を高めた「RC5型」を販売する。また同年には、四輪車の教習所向けに同じく搭乗型のドライビングシミュレーター「DA型」の販売もスタートさせた。
DA型はフライトシミュレーターが用いる6軸モーションベースや振動機能付のシートを採用し、運転時の加減速やカーブ走行時にかかる前後左右の加速度を疑似的に再現した。まさに危険を安全に疑似体験する機器である。ただし高機能ゆえに高価で、本体だけで税抜き980万円、4つのシーンを想定したソフトも80万~150万円だった。
2011年、高次脳機能障がいを有する人の運転再開に向けた初のドライビングシミュレーターとして「リハビリ向けSナビ」を販売する。この時期になると能力の高いGPU(Graphics Processing Unit/画像処理装置)が市場に出まわり、家庭用PCのOS上でも連続する複合処理が可能になった。同時に安価になり、リハビリ向けSナビのベースモデルである「Sナビ」の価格は税抜き35万円にまで下げられた。
2021年、市場からの声に応えた本格的なドライビングシミュレーターを導入する。ホンダのコンパクトカー「フィット」のシート、ステアリングやペダル、シフトまわりのパーツに加え、同社のコンパクトミニバン「フリード」のカラー液晶メーターなど実車のパーツをふんだんに用いた「DB型Model S」(当時の価格は税抜き285万円)がそれだ。ちなみに1996年以降、これまでホンダが市場へ導入した四輪車シミュレーターは約2500台で、このうち34台が15カ国へ輸出された。
新型ドライビングシミュレーターの発売
2023年4月、DB型Model Sにリハビリテーション向けソフトである「運転能力評価サポートソフト」を組み込んだ「DB型Model A」を販売する。大型3面液晶モニターを備えた「フルセット」に加え、モニターを小型化しシートを省いた「サブセットA」、モニターだけを小型化した「サブセットB」の3タイプを取りそろえた(いずれもオープン価格)。
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