高次脳機能障がいからの運転復帰を支えるホンダ 医療機関向けドライビングシミュレーターとは

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具体的には、新しいことが覚えられない「記憶機能障がい」や、日常生活の整理や計画が追いつかないとされる「遂行機能障がい」、さらに怒りっぽくなる「社会的行動障がい」などが挙げられる。

また、話す/聞く/読む/書くことが難しくなる「失語症」、家族などの判断ができなくなる「失認症」、ものの使い方がわからなくなる「先行症」なども高次脳機能障がいだ。さらに、こうした症状だけを切り取ると認知症に共通する部分があるため見極めも難しい。

冒頭に述べたとおり、高次脳機能障がいは、脳血管障がいや脳外傷によって引き起こされる脳機能に対する障がいだ。第三者の目に見えない障がいで、年齢に関係なく発症する。

しかし、発症後の適切な治療、そしてリハビリテーションをすすめていけば元の生活に戻れる可能性が高い。認知症は進行性の病だが、高次脳機能障がいに進行性はない。そうなると、以前と同じく自動車の運転をしたいという気持ちが芽生えるのは当然のこと。

実例として、脳を損傷され千葉県千葉リハビリテーションセンターに通われている人のうち、運転再開希望者は2009年から2016年の間で約2倍に増加したという(出典/全日本指定自動車教習所協会連合会)。

とはいえ、高次脳機能障がいを患った人が自動車の運転を再開するには、長い時間と大変な労力を必要とする。

運転再開までのプロセス

まず第1ステップとして、運転再開を希望する本人が病院などで相談を行う。病院では医師や作業療法士を含めた協議がなされ、必要な検査を実施し、得られた検査の結果の協議と、本人を交えた面談を経て、公安委員会提出用の診断書が手渡される。

続く第2ステップとして、診断書を手にした本人が、今度は運転免許試験場に出向き、臨時適正相談と検査を受け、ようやく運転再開への道が拓かれる。

病院に相談すればすべてが丸く収まるわけではない。症状は人それぞれなので、その人に合った確実な検査と、結果の協議が必要だ。また、そもそも病院へ相談するにしても治療が目的ではなく、あくまでも運転能力の評価にとどまっている。よって、作業療法士のもとで行われる検査だけで運転能力が正しく測れているか不明確である。これも課題のひとつだ。

これに対し、Honda運転復帰プログラムにおけるドライビングシミュレーターでは、実際の運転環境に近い状態で検査を行うことで、医師や作業療法士が適切な判断を行う材料のひとつとして活用され、着実に成果を上げている。

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