医師が教える認知症、日常の兆候で早期発見のコツ 症候の出方はさまざま、細かな変化を見逃さない

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●血管性認知症の症候

血管性認知症は、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中や、心停止、極度の血圧低下などによる脳損傷、脳の血管炎などが原因で起こります。そのため、こういった疾患をもつ人、もっていた人は特に注意する必要がある認知症です。

血管性認知症は、脳の損傷を受けている場所によって症状にムラがありますが、できることとできないことが明確で、これを「まだら認知症」といいます。

一見しっかりしているように見えても、新しいことが覚えられない、歩く・服を着るなどの簡単な日常動作ができなくなる、無気力になる、歩く速度が遅くなる、些細なことで急に笑ったり泣いたりする(感情失禁)といった症状が現れます。また症状が連続的でなく階段状に悪化していくのも特徴です。

●レビー小体型認知症の症候

レビー小体型認知症は、レビー小体として顕微鏡で捉えられる異常たんぱく質(αシヌクレイン)が、脳の神経細胞に溜まり、細胞を壊すことで起こる認知症です。

また、この認知症では、体の動きが緩慢になるパーキンソン症候群の症状、ないものが見えるといった幻視、レム睡眠中の行動異常などが見られます。例えば、足がふるえる、動きが遅くなる、実際にはないもの・いない人が見える、寝ている最中に突然暴れたりするなどがあります。

なおこのたんぱく質は脳に限らず全身の神経細胞に現れるため、自律神経も侵されることにより便秘、立ちくらみといった症状が見られます。

ほかの認知症で見られる記憶障害も現れますが、初期には目立ちにくいです。さらに、認知機能がよいときと悪いときが波のように変化するので、認知症と認識されにくく、ほかの精神疾患と誤診されてしまうこともあります。

認知症は脳の萎縮によっても起きる

●前頭側頭型認知症の症候

前頭側頭型認知症は、思考活動を支え人格を司る前頭葉や、言葉の意味などを把握する側頭葉が萎縮して起こります。

そのため、理性的な行動ができなくなったり、言葉が出にくくなったりします。真面目だった人が暴力や万引きなど反社会的な行動を取る、以前と人格が変わったように攻撃的な言動をする、言葉の意味がわからない、同じ言葉を繰り返す(滞続言語)、毎日同じ時間に同じ行動を取る(常同行動)といった症状が見られます。

反対に、無気力や無関心になることもあるので、そのような症候が現れた場合にも注意が必要です。

このタイプの認知症では、もの忘れや幻覚、妄想といった認知症によく見られる症状が中心ではないため、本人には自分が病気だという自覚が出にくいことで、認知症の診断が遅れてしまうこともあります。

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