コウジさんは現在、別のA型事業所で動画撮影の仕事をしている。時給は最低賃金に等しい水準だが、支援内容に大きな不満はないという。今望んでいるのは、問題の事業所に相応の行政処分が下されることだ。
しかし、コウジさんは楽観はしていない。事業所側は自治体の聞き取りに対し、一連の事実とは違う記載はいずれも「過誤」、すなわち単なるミスだと主張。不正請求とは認めていないと聞いているからだ。ユニオンの質問に対しても「誤りがあるかは定かではない」との旨を回答。もし誤りだった場合は、コウジさんに過払い分の給与を返還するよう求めているという。
自治体はどうジャッジするのか
今後所管の自治体はどうジャッジするのか。これは、コウジさんがかかわった事業所だけの問題ではない。行政がフェアな姿勢を示すことは、業界全体の正常化にもつながる。
今回の取材では、当初コウジさんから「話は別の利用者から聞いてほしい」と提案された。理由は「僕は話があまり上手ではないので」。生きづらいことばかりであったろう、これまでの就労経験がそう言わせたのかと思うと、複雑な気持ちになった。
しかし、実際に取材で話を聞く限り、コウジさんにまったく問題はなかった。それどころか福祉や労働に関する制度や法律の知識は驚くほど幅広く、正確だった。開示請求だって簡単なことではない。それらをコウジさんはやり遂げた。私はコウジさんに話を聞けてよかったと思っている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら