中国が南シナ海で乱発させる嫌がらせの手口 フィリピンは80歳の老艦で主権を守る

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他方ミグズ・ズビリ上院議長が、中国船の妨害活動に抗議する意思を示すためとして中国製品のボイコットや中国企業の公共事業締め出しを提案するなど、政治家の間でも強硬な意見が目立ってきた。国民の対中感情の急激な悪化が背景にある。

民間調査会社パブリクス・アジアが2023年3月に実施した他国や国際機関の信頼度に関する調査では、対象の12カ国・国際機関のなかで中国への信頼度が最も低く、「とても信用する」は9%と唯一の1桁だった。

64%が「中国を信用しない」

「ある程度信用する」でも25%。逆に「まったく信用せず」は断トツの28%、「あまり信用せず」を合わせると64%が不信感を抱いていた。ちなみに「とても信用する」が最も多かったのは日本で55%だった。

他の調査でも同様の傾向が示され、しかも中国への不信感が年を経るごとに広がっている様子がうかがえる。別の調査機関パルスアジアが南シナ海問題をめぐって実施した2023年6月の調査では、友好国と同盟関係を結ぶことを支持する回答者は80%に上り、反対はわずか3%だった。

領有権問題の解決に向けてマルコス政権が取り組むべき施策について聞くと、「軍事力の強化」が72%、「同盟国との合同海上警備や軍事演習」が64%、「外的脅威から国を守る能力の強化」が61%だった。アメリカ軍との「訪問アメリカ軍地位協定(VFA)、EDCAの遂行」が54%の支持だったのに対して、中国が力を入れる東南アジア諸国連合(ASEAN)の「行動規範」策定の支持は37%と最下位だった。

ぼろぼろの甲板に、海兵隊員らが貝殻で書いた「PEACE」(2014年8月、写真・柴田直治)

在フィリピン・アメリカ大使館は8月1日、南シナ海の環礁を軍事基地化する事業を請け負ったとしてアメリカ政府がブラックリストに搭載している中国交通建設(CCCC)がマニラ湾の埋め立て事業に関与しているとフィリピン側に注意喚起する声明を出した。

これを受けてマルコス大統領は8月7日、マニラ湾で計画されている埋め立て事業のほぼすべてを凍結するように命じた。上院でも中国交通建設を締め出すよう求める議員がいる。領有権争いの敵方であるとともに最大の貿易相手である中国や中国企業とマルコス政権がどう向き合うか今後が注目される。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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