古事記の世界に転生した男、本当の気持ちに気づく 嫉妬ばかりの人生だった 小説『古事記転生』(4)

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八十神たちの息のあった野太い声が聞こえる。準備? 一体何が起きるっていうんだ?

「ナムチよ、あれを見よ!」

タケルが指差す先には、小高い丘があり、そこには熱を帯びて真っ赤に輝く3メートルほどの大岩があった。

「え、ちょっと! あれどうすんの? まさか……」

「いかにも。あの熱々の大岩を今からお前にぶつける」

「そんなことしたら焼け焦げて死んじゃうよ!」

「少々手荒な方法になったが、お前にはここで死んでもらう! さぁ、皆のもの。大岩をナムチにぶつけるのだ!」

俺を羽交い締めにしていた八十神たちが離れると、俺の足首と地面は固い紐で結ばれ、両手も縛られていた!

「あ、足が全く動かない……助けてくれー!!」

「最後にホンマの気持ちに〝自分で気づけた〟やんか」

ゴロゴロゴロゴロ……!

真っ赤に熱せられた大岩がすごい勢いで迫ってくる。恐怖に耐えられず、目を開けていられない。

あぁ、俺は『古事記』の世界でも死ぬんだな。前の世界でも殺されて、こんなわけのわからない世界でも殺される。俺はとことんツイてない人間だな。

もし、もう一度人生をやり直せるなら。こんなくだらない嫉妬なんかで殺される人生は嫌だ……。

古事記転生
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思えば俺もタケルのように、他人に嫉妬してばかりの人生だった気がする。そっけないけどなんでもできる兄貴に嫉妬して、いつも素直になれなくて。本当はバーの仕事を一緒に楽しみたかっただけなんだけどなぁ。もっと毎日を……って、あれ?

俺は死を目前にどんだけ考えるんだ? 大岩はどうなった? あ、これが走馬灯ってやつか?

変に冷静になったタイミングで目を開けると、眼前すれすれに大岩があった。終わった! 今度こそサヨナラだ。

ドカーーーーーーーーーン!!

「……ぉ~……ぃ」

「ん? なんだ?」

「……おぉ~い!」

遠のく意識の中で誰かの声が聞こえる……。

「おぉ~い、サムよ。最後にホンマの気持ちに〝自分で気づけた〟やんか。戻ったらその気持ち、素直に伝えるんやで」

サム(アライコウヨウ) 神話系YouTuber「TOLAND VLOG」の語り手

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さむ(あらいこうよう) / Sam(Arai Kouyou)

名古屋市大須で活動する神話系YouTuber「TOLAND VLOG」の語り手。大阪府出身。「世界の謎はあなたのすぐそばにも存在している」をテーマに神話や世界の歴史を中心に動画を発信。名古屋市大須で「CAFE TOLAND」やBARを経営しており、日本各地の地域おこしや野外フェスなども手掛ける。独自のクラウドファンディングサービスも運営。

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