古事記の世界に転生した男、陰陽太極図に教わる 何でも人のせいにするな 小説『古事記転生』(3)

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

彼女にフラれたり、友だちと喧嘩したりする度に、現実から逃げるように酒を呷(あお)った日々がフラッシュバックして胸が締めつけられる。

「だから、自分の心の中にある〝見たくない陰の部分〟に気づいて受け入れていくことが大切やねん。心の陰陽を統合していくっちゅうことや。全てはバランスやからな。それを乗り越えないと、今世でも来世でもずーっと同じことを繰り返すことになる。それは嫌やろ? だから、自分で気づくしかないねん」

「うーん、なんとなく言ってることはわかったけどさ、なんでそこまでして成長しないといけないんだ? 人間は成長することが全てなのかよ? 聞いてるだけでしんどいよ!」

「まぁ、成長が全てってわけじゃないよ。行動は全部自分で選んでいい。ただ、全ての魂は成長を望んでるはずやし、ご先祖さんも目に見えない存在もそのためにサポートし続けてくれてるってことは忘れんといてな。ワシもその一人やし」

全ての魂は成長を望んでる? なんか納得できるようなできないような……。

「何があっても〝人のせいにするな〟」

「でもさ、俺がワタリさんに刺されたことも、元カノに浮気されてフラれたのも絶対に俺は悪くないだろ! あんな最低な出来事から何を見出したらいいんだよ」

「あんな、もう一個だけこの世界の大原則を教えといたるわ。それはな、何があっても〝人のせいにするな〟ってことや。これを本当の意味で理解すると、次のステップに行くスピードがグンと上がるんやで」

「さっきから言ってる〝次のステップ〟ってなんだよ……? ていうか、人のせいにしないって、全部自分のせいにしろってこと? 相手がどんなに悪くても、どれだけ理不尽な目にあってもか? どれだけ頑張って報われなくても、それは自分のせいだって言いたいのかよ。全く世知辛ぇなぁ、この世界は!」

陰陽の話も、自分で気づくことでしか成長できないって話も頭では理解できる。でも、俺の人生に起きた数々の最低な出来事も俺自身のせいにしないといけないってのは、そう簡単には受け入れられない。

「この話をホンマに理解してないと、大体そういうリアクションになるねん。長くなるから、この話は今度詳しくするわ。ちなみに、そんなに世知辛い話でもないからな。ところでサムがさっき言ってた『どれだけ頑張って報われなくても』って言葉、やけに熱がこもってたけど、思い当たることでもあるんか?」

「やけに熱がって……そりゃ一緒に働いてる兄貴に対して『なんで俺の頑張りを認めてくれねーんだ?』っていつも思ってたからな。できてないところばっかりグチグチ指摘してきてさ……そもそも相性が悪いんだろうな、俺らは。どう考えても俺は悪くないし」

「ふむふむ。兄貴に対する思いか……この神話の世界でも兄たちとの関係性が重要やし、その辺に何かしらの答えがあるんかもな」

いきなり兄貴の話になって動揺してしまったが、タマちゃんが言った〝ある言葉〟が引っかかった。

次ページ「数千年前の日本といえば神の時代やないか」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事