搭乗する「人型巨大ロボ」登場、開発者支えた想い 1台4億円で受注生産、狙うは海外の超富裕層
SF世界から飛び出してきたような造形と動作が、非日常的な雰囲気を演出する。発表会場は何の変哲もない大型物流倉庫だったが、まるでロボットの秘密基地に迷い込んだようだった。
2本のジョイスティックとペダルを駆使し、デモンストレーションを担当した「パイロット」は、ツバメインダストリの石井啓範CTOだ。日立建機出身、横浜港で展示されている「動く原寸大ガンダム」の開発を主導したフリーエンジニアで、アーカックスの設計も担った。(石井さんのガンダム開発についての詳細はコチラ)
動力にはEV向けのバッテリーを採用し、関節には産業用ロボット、フレームや操作系には建設機械の技術を活用した。内部のフレームは鉄やアルミ合金の金属製で、外装は繊維強化プラスチックを使用し、メカとしての質感維持と軽量化の両立に成功。胸部などに取り付けた計9台のカメラで、コックピット内に設けた4面モニターに外の様子を映し出す。
産業用ロボットや建設機械の安全規格に準じ、低重心で転倒しにくい構造にした。ハッチを開き、操縦席から舞い降りた石井さんは、「今度は人が乗って動かせる物にこだわりました。『カッコイイ』と言ってもらえるのが、いちばん嬉しいです」と笑顔を見せた。
SNSでスペシャリスト集める
アーカックスはツバメインダストリの吉田龍央CEOが企画し、構想に約3年、開発に約2年半をかけて完成にこぎ着けた。
祖父が鉄工所を営み、幼い頃からものづくりに親しんでいたという吉田さんは、明治大に在学していた2019年、電動義手などを製造する会社を起業。自らも開発者として事業に邁進する傍ら、かねて目標としていたガンダムのような巨大ロボットの製作に乗り出すことを決意した。
主にSNSを用いて仲間を探し、石井さんをはじめとして設計や映像などの各分野でのスペシャリストを9人集めた。開発メンバーに共通するのは、「ロマンを現実にしたい」という強烈な願いだという。吉田さんはこう語る。
「すべての産業は夢に対するロマンから始まりました。例えば航空機だって、宇宙開発だって最初はSF世界の話でした。それが今は実現している。搭乗型ロボットが日常的に活躍するような未来も、きっと訪れると思います。まずはエンタメの分野から入り、将来的には災害現場や宇宙空間でも使えるようなものを作りたい」
デザインを担当した堀田智紀さんも、そんな思いに共鳴した一人だ。普段は「AK_BAN」(アカバン)というハンドルネームで、フィクション作品向けのフリーメカデザイナーとして活躍している。オリジナルの人型ロボット兵器の絵をSNS上に投稿していたところ、吉田さんにスカウトされてチームに加わった。
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