日本を蝕む「20代の給料安すぎ問題」超残念な実態 「初任給引き上げ政策」がなければ経済成長なし

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所得総額の維持策を検討するにあたって、もう1つ見逃されがちな重要なポイントがあります。高齢化です。

年齢が上昇すると、年収も上昇し、支出も増える傾向があります。そのため、仮に人口が増えなくても、単に国民の平均年齢が上がるだけで消費総額は増加します。

しかし、多くの国では50代に入ると支出が減少する傾向が見られるので、人口が変わらなくても、それ以降は消費総額が減少します。

これは多くの先進国で共通してみられる傾向で、ライフサイクルの影響だと分析されています。アメリカも他の先進国と同様に、このサイクルが確認できます。24歳以下は、年収以上に消費をしています。消費のピークは45~54歳になります。その後、55歳から64歳になると消費が減って、消費性向が71.5%まで低下します。

国連のデータによると、日本の年齢の中央値はすでに49.1歳に達しています。

ですので、仮に人口が減少していなくても、人口構成上、日本は消費総額が停滞しても何の不思議でもないステージにいるのです。

そのうえ、あらためて言うまでもなく、日本ではすでに人口減少が始まってしまっているので、二重苦にさいなまれているのです。

この状況を少しでも緩和するには、消費性向が高い若者層にお金を回すのが、誰にでもわかる論理的な解決策です。

最低賃金と公務員の初任給を引き上げよ

しかし、本稿で紹介したとおり、日本では若い層にお金が適切に分配されているとは言いがたい状況にあります。

日本の若い人のスキルがアメリカ人やイギリス人より劣ることはないので、岸田総理にはぜひ、特に若い世代を中心にした賃上げ政策に力を注いで、全力で推進していただきたいと思います。

最低賃金は主に高齢者と女性の賃金の引き上げに貢献してきましたが、初任給の引き上げにつながっていません。しかし、最低賃金が平均1004円にまで上がっていますので、これからは若い人の賃上げにつながる水準に近付いています。

これはチャンスです。これからはさらに最低賃金を引き上げ続けて、初任給の引き上げに影響を与えるようにするべきです。

政府は賃上げに直接的に影響を与える武器は最低賃金しかないですが、間接的な武器はあります。

それが、公務員の初任給の引き上げです。これによって、民間に影響を与えることができます。自衛隊、警察、学校の先生、介護職などの初任給を引き上げて、民間の賃金に圧力をかけるのです。

全労働者の給料を均等に上げる必要性はありません。初任給を中心に賃上げをするべきです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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