「中国が強める反日」処理水放出に"大反発"の背景 「尖閣問題以来の日本叩き」との現地の声も

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松井社長は日中両国の食品企業や飲食店に調味料を販売しており、水産加工企業との取引も多い。処理水放出後には調味料を卸している中国の取引先2社から「日本産の原材料を使っていないか」と確認の電話があった。

「パッケージなどで『日本』テイストを強調していたのですが、今回の騒動で、中国産であることを前面に出さないといけなくなりました」と苦笑する。

塩がスーパーから軒並み消える

処理水放出翌日の25日には、社内の会議で塩の確保も議題になったという。塩が汚染されるかもしれないと市民が備蓄に動き、スーパーから軒並み在庫が消えたのだ。

「当社が原材料に使っている塩は特注品で、市場で塩が不足すると特注品の生産が後回しにされるかもしれません。在庫がなくなった場合のことも考えないといけません」

中国の製塩メーカーは次々に、「中国で流通している塩は岩塩と湖塩がほとんどで、海洋汚染の影響を受けない」「岩塩は十分にあるので買いだめ不要」と自制を求めている。

ちなみに松井味噌の会議でも、「海塩から岩塩に切り替えるべきか」が話し合われた。松井社長は「しばらくしたら塩のことなんてみな忘れるだろうから、現状のままで行くことにしました。東日本大震災のときも塩の買い占めが起き、中国人有力者が工場の塩の在庫をよこせと詰めかけたんですよ。事業への影響は半年くらいと思っていますが、それでも1つひとつ大変ですね」とため息をついた。

中国人の日本に対する敵意が「尖閣並み」なら、情報の拡散スピードは「東日本大震災」「コロナ禍初期」並みかそれより速く、混乱を引き起こしている。塩の買いだめもSNSの呼びかけで加速した。

汚染物質が肌から吸収されるリスクがあるとSNSで情報が流れると日本製化粧品の返品も相次ぎ、25日は中国のSNSで日本の東北地方で発生した地震がトレンド1位となり、処理水放出と結び付けられた。ちなみに同日夜に東北で起きた地震は最大震度1で、日本ではまったく話題になっていない。

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