フジテレビが仕掛けた「ネット専門局」の正体 「24時間ニュースぶっ通し」で何を狙うのか

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――「社内外」とおっしゃいますが、内部での敵も多かったのでは? 私は4月1日のホウドウキョク開局当日は、副調整室の現場などを取材させていただきましたが、多くの方が心配そうに見に来てましたよね。会社の偉い人たちもいたように見えました。

私は、報道畑の人間ではないですし、単にバラエティの人間というよりは、よくわからない変わったものを作ってきた人間です。それもあって、「大丈夫か」とか「オイオイオイ」とか、いろいろ思うところがあったんだと思います。それがいざ始まってみると「お、意外とちゃんとしてるじゃないか」という反応が返ってきた。実際に放送が始まってみれば、周囲も納得するかなという自信はあったので「思ったよりマトモじゃないか」みたいな反応が返ってくるのも想定内です(笑)。

――福原さんは、報道局の生え抜きではなく、このためにほかの部署から来ましたよね。報道局との軋轢はなかったのでしょうか?

局によって多少の違いはありますけど、報道局というセクションは社内でもエスタブリッシュメントというか、外から見て敷居が高いというのは確かにそうなんです。ただフジテレビの報道は、組織的にも「やるんだ」と言ったら、皆やってくれるみたいなところがありますね。そこの一体感的なものというのは、ウチならではかな。各部署間の風通しの良さがあるというか、何だかんだいって協力してくれるという空気はあるんです。

ネットで報道専門チャンネルを作る意味

――今、フジテレビが「ネットで報道専門チャンネルを作る意味」なんですけど、そこについてはほとんど周知されてない感じも受けますが。

フジテレビは、もちろん地上波でもニュースのコンテンツを発信しているわけですけど、それとは別にネット上にオリジナルの報道チャンネルを立ち上げたということです。さっきの話の、見逃したドラマのネット配信みたいなサービスって、地上波コンテンツの価値を最大化する目的でのネット利用ですよね。でも『ホウドウキョクは、地上波の価値を最大化するわけでも、地上波の動員力をもってネットでビジネスをやろうというのとも違うんです。

「最終的にはリアルタイムとアーカイブの両方を行き来させるのが目標」

――テレビと競合するようなものをつくったと?

いいえ、前提としてテレビを見る人とネットを見る人は食い合わないんですよ。それぞれ入り口が別なんです。現状、テレビをよく見る人とネットをよく見る人がいるという状態なんです。それぞれでまったく目的も方向性も違います。テレビは影響力がなくなっていると言われていますけど、何かを認知させようというメディアとして、テレビはまだまだ大きな力を持っています。一方で、公共性原則やスポンサーなどの縛りがあるため、コンテンツの中身に関しては多くの制約があります。たとえば、どんなに注目される話題のニュースに関する記者会見であろうが、それを1時間流しっぱなしにするみたいなことはできないんです。でもネットならそれが可能ですよね。

――放送時間に縛られない。

報道局の記者たちは、たくさんの情報を持っているのに、それをアウトプットするニュースの時間は、午前11時台に30分、夕方に3時間、夜に30分といった具合に、限られています。記者の労力のわりに、本番でのアウトプットは決して多くはないんです。

――ニュース番組の中で記者は、原稿を棒読みしがちですよね。キャスターとのやりとりでも、質問も型どおり、返事は原稿のまま。それがニュースをつまらなくさせている気がします。

そうなんです。でも実際、彼らはもっとたくさんの話ができるし、日々対象を追いかけているので、出すべき情報はたくさん持っている。『ホウドウキョク』は、それを出す場所であればいいと思っています。本番で鍛えられることで、記者のポテンシャルが上がっていく。それが、地上波の取材にも必ずプラスになるはずです。

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