こんまり氏が「捨てる or 捨てない」の分水嶺に「ときめく」という価値観を採用していることは、すでに書いたとおりです。では、「ときめかないけれど、捨てられないモノ」が出てきたら、どうするのでしょう。
この「簡単には捨てられない」という状態、アンガーマネジメントの観点でも厄介な問題です。もともと警戒心が強く、さらに猜疑心(ネタミ)、劣等感(ヒガミ)の感情が増大していく悪いスパイラルに陥りがちな人ほど、「物を捨てられない」という傾向が強いのです。
こういう人にとって、情報とモノの「お片づけ」を効率的・徹底的に行えるようになることは非常に有効です。なぜなら、あまりに多くの情報やモノに囲まれ、周りが見えにくくなっている状況を改善できるからです。
感謝の意を唱えながら、割り切る
「捨てられない」からの脱却策として、こんまり氏は「モノの役割を考えること」を挙げています。たとえば、「買ったばかりだけれど、自分には似合わなかった服」。こうしたケースでは、「私に似合わないタイプの服を教えてくれてありがとう」と、感謝の意を唱えながら、「もう役割を終えたモノ」を捨てることへの躊躇をなくすのです。
「いつか勉強し直すかもしれない」昔のセミナー資料、「いつか来るかもしれない」来客用の布団なども、「そのときが来たら入手すればいいや」程度に考えでいるほうが、すっきりしそうです。数年に1回起きるか起きないかということのために部屋のスペースを塞がれるのは不幸ですし、つきつめれば、これがイライラのもとにもなります。
そうであるなら、「過去への執着をなくしてくれてありがとう」、「未来への不安を減らしてくれてありがとう」と感謝してからゴミ箱へ。部屋と心を整理して、ますます幸せな生活を目指せそうですね。
捨てる判断を繰り返し、大好きなものに囲まれる生活を送ることで、気持ちのいい時間が増えるはず。すると、自分の判断に自信が出てきて、自分のことが好きになると、こんまり氏は説きます。これは、自分の選択力、決断力、行動力が、ひいては人間関係、仕事、暮らし方など多方面につながるからではないでしょうか。
「誰と付き合えばときめくのか?」「どんな仕事をすればときめくのか?」。「怒りやイライラのコントロール」という観点で考えても、自分にとって「ときめかない」人間関係、仕事などは、バッサリ切り捨ててしまう割り切りが必要と言えるでしょう。
アンガーマネジメントは、アメリカから入ってきたトレーニング方法なので、日本の道徳論と異なる選択を是とする場合があります。たとえば、「みんなと仲良くしなければならない」、「与えられた仕事は一生懸命取り組まなければならない」といった考え方は、自分がイライラに押しつぶされないために、廃することも可能です。道徳論に縛られすぎないことも、怒りと上手に付き合うためのコツと言えましょう。
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