大谷翔平、世界一になっても燃え尽きない凄い理由 WBC日本代表のヘッドコーチが語る実像

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そうやってスタートしたものの初戦の中国戦からつまずきました。四球でランナーがたまるものの、3回まで2安打に抑えられました。4回に大谷翔平選手の二塁打で2点を先制したものの、追加点が入らず、7回まで2点差のシーソーゲームでした。

チェコ戦でも初回から佐々木朗希選手の球を捉えられて先制され、3回までリードを許しました。このとき、アマチュアの選手がどうしてあんなに打てるのか、全員がざわついている雰囲気がありました。

ウサギと亀の話ではありませんが、強いから必ず勝てるわけではありません。ウサギがなぜ負けたのか? 亀を見て、亀が遅いと油断して休んだからです。しかし、亀はゴールしか見ていませんでした。亀は相手がライオンでもトラでも関係なかったでしょう。もし相手がライオンだったら、ウサギはそもそもスタートラインにも来ていなかったでしょう。

日本はウサギになってしまった

中国やチェコは亀で、私たちはウサギになっていました。戦いとは相手を負かそうとする行為ではありません。自分がゴールに向かってできることを全力で凡事徹底することなのです。

中国の選手もチェコの選手も必死に食らいついてきているからバットにボールが当たるのです。デッドボールを受けてもすぐに立ち上がって、戦おうとしている。走っている。そこで自分たちに足りないものを教えてもらいました。

これまで全力全力と言いながら、中国やチェコを見ていなかっただろうか? 全力とは相手ではなく、自分たちのできることをすることではないだろうか? これに気づかせてもらったからこそ、整列して感謝を伝えたあと、チェコの選手を拍手で称えたのです。試合には勝ったけれども、心の底から感謝を示して頭を下げました。

侍とは、そもそも命のやり取りをする仕事です。相手を切り殺して、ガッツポーズなんてしません。剣道でも一本が取り消しになります。今日はたまたま自分が生き残ったけれど、明日は我が身なのです。そうやって命を懸けて相手に向かっていったのが侍です。

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