米国の学者8人、「私なら70年談話をこう語る」

アジアの平和のために何を語るべきか

<アルベルト・ディアス-カイエロス>

Alberto Díaz-Cayeros ●スタンフォード大学 フリーマン・スポグリ国際研究所シニアフェロー、政治学部教授。専門分野は統治、地方開発。

先の大戦が終わりを告げてから70年の歳月が流れました。我が国は二度と武力を用いないという世界の国々との誓いを果たしてまいりました。戦争で亡くなられた方々のことに思いを致すと、すべての人間の命はかけがえのないものであることに気づかされます。我々は国際社会との協調を深めていくとともに、環太平洋を始めとする世界の恵まれない人々や国々の人道支援のために、我が国の繁栄や平和を生かし、貢献していかなければなりません。

我が国は、戦前に植民地支配と侵略によって、近隣諸国やその人々に多大な苦痛を与えたことを忘れてはなりません。改めて深い謝罪の念を表明します。暴挙の記憶は徐々に遠い昔のものとなり、いまや二世代にわたる戦後生まれの日本国民は、途上国の人々の多くが想像もできない生活水準を享受し、人間の安全保障を確立しています。我が国は近隣諸国とも平和的関係を続けており、国内では平等、尊厳、高い生活水準、そして犯罪や暴力の少ない、調和のとれた社会を築くことに成功しました。繁栄と安全を目指す中でえた知見を世界の国々と分かち合うことで、戦争被害者の霊に応えることが、我が国の役割だと考えます。これが我が国の国際的貢献のうち最も持続性の高いものになるはずです。

戦後日本の貧困と混乱は、現代の貧困国とほとんど同じ状況でした。しかし我が国は、国民の努力により、また国内外の平和を保障する制度ならびに国際社会の支援に助けられ、そこから這い上がりました。今度は我々が、アジアやラテンアメリカを始めとする近隣諸国や貿易相手国を支援する番です。日本が先頭に立って、病気、暴力、貧困から世界中の人々の命を救うことができると思います。

貿易や金融を通じて、国際社会との絆は今後もどんどん強まるでしょう。輸送費や通信費の低下ならびに加速的な技術革新の結果、今やすべての国が近隣諸国です。メキシコ同様にペルーとも、米国同様ドイツとも、またインド同様中国とも繋がっているのです。アフリカ、アジア、ラテンアメリカの人々は、我が国が1945年にそうだったように、厳しい貧困に直面しています。我が国が学び達成してきたことを世界の国々に伝播できれば、乳幼児死亡率の低下、気候変動を原因とする人口移動の緩和、持続可能エネルギーの開発、民主的自由と権利の保障などの現代が直面する大きな課題を一緒に克服していくことができるでしょう。この目標を達成するために、経済援助を通じて富の一部を分かち合い、日本国民も復興の時代を思い出しながら一致団結して努力し、恵まれない近隣諸国のために役立ちたいと思います。我が国が先頭に立ち、戦後の復興を可能にした価値観、高度成長期に得た重要な教訓、そして我が国民の勤労倫理を、積極的に世界に広めて行きたいと思います。平等で、豊かで、平和な世界を築くために。

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