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角川辞め「香川」で予約制の古書店開いた彼の境地 予約があれば店を開けるスタイルを貫く理由

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  • 蜂谷 智子 ライター・編集者 編集プロダクションAsuamu主宰
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「高松ではハローワークに行ってみても自分のやりたい仕事はない。それで何か店でもやってみようかなと思って古本屋を始めました。当時東京では2002年にオープンした松浦弥太郎さんの『COWBOOKS』が火付け役となって、個性的な古本屋が出始めていたころでした。

前職の仕事柄、僕は本屋界隈のトレンドはつかんでいましたが、2005年の四国にはそんな個性的な本屋はまだなかった。だから『なタ書』をオープンしたのです。将来的に個人が営む本屋の面白さが支持される時代が、絶対に来るという確信はありました。

ただし当時の高松には、新しいタイプの古書店が支持される文化的な土壌自体がなかった。正直にいえば香川県でこの店が受け入れられるには、時間がかかるだろうと思っていました」

うまくいったのは、時代の巡り合わせもある

東京の出版業界で得た知見と、個人的なアンテナに導かれる確信によって「なタ書」を開店した。しかしそれはあくまでも都会から来た人間の見立てであって、当時の香川県の市場はまったく開拓されていなかった。後に商売がうまくいったのは、時代の巡り合わせもあると彼は言う。

「開店当初はまったく予測していなかったことですが、ここ20年で飛躍的にソーシャルメディアが普及して、個人商店でも情報発信がしやすくなりました。

加えて現代アート関連で直島が人気になったり、瀬戸内国際芸術祭が成功したりといったことで、香川への観光流入が増えたこともあります。住人の文化に対する意識も高まっていると思いますね。そんなことが追い風になり、仕事は順調です」

都心で受け入れられているトレンドを地方で展開するのは、ビジネス成功のひとつの定石。だがあるトレンドがどれぐらい広がるのかは、その土地の特性によって予測できない部分もある。藤井さんはブルーオーシャンだった高松でいち早く「なタ書」を立ち上げ、結果的に時代がそれに追いついた。

高松のカルチャーシーンの草分けとして、藤井さんは知る人ぞ知る存在だ。街を歩けば地方議員から近隣の商店主、学生まで、さまざまな人から声がかかる。仕事面でも店に置く本の選書を任されたり、四国内や周辺地域のブックイベントの出店を請われたりと、広く活躍している。

取り扱いは古本だけでなく、独自に仕入れているジンも(筆者撮影)

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【予約制をやめる気はない】

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