角川辞め「香川」で予約制の古書店開いた彼の境地 予約があれば店を開けるスタイルを貫く理由

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店主の藤井佳之さんは1976年大阪府生まれ。その後高松に移り高校時代まで高松で過ごし、横浜国立大学に進学。東京の角川書店(現:KADOKAWA)で新規事業に携わった後に29歳で地元に戻り、予約制の古書店「なタ書」をオープンした。

藤井さんの語り口は独特。「なタ書」の日常をつぶやくTwitter(現X)を楽しみにするファンも多い(筆者撮影)

そのまま東京で生きる道もあったが、しなかった

「29歳のときに所属していた部署が、赤字を抱えてなくなりそうになりました。そのことがきっかけで異動するか転職するかという選択に迫られたときに、そのまま転職なり異動なりして東京で生きる道もあったのですが、そうしなかった。ふとこのまま東京にいる人生が、5年、10年先まで想像がついてしまったんです。そこで冷めてしまいました。

別の角度からいうと、僕は当時ひとり暮らしで家賃を20万円払っていたんですよ。それを払い続けるとなると10年で2400万ですよね。そのために働く。それが馬鹿らしくなったということもあります。

最初は香川に帰ってくる気持ちはなくて、沖縄の出版社で引き合いがあったので、そこで働こうと思っていました。それが新幹線に乗っているうちに高松の実家や、ひとり親で自分を育てた母のことが頭に浮かんできて、とりあえずのつもりで高松に戻り、今に至ります。

横浜国立大学に行ったときは高松が嫌で仕方がなくて飛び出したわけです。実は高松にUターンした時も、気持ちの変化はありませんでした。

それでも親のことだったり、そもそもが縁のない土地で生きる窮屈さだったりと、東京から離れるにつれ故郷に気持ちが収斂していきました。そういうときって、妄想でどんどん自分の選択に意味付けしていくんです」

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