民間会社を戦場に近づける「経済効率」と「技術力」 「ワグネル」のような戦争請負会社が世界を脅かす
西側に敵対的な政権は、すべからく独裁政権であり残虐非道であるというイメージは、ある意味西側諸国のプロパガンダに近いものであった。アジアの野蛮、インドの野蛮、アフリカの野蛮といった具合に、そうした政権にレッテルを貼るのだが、少なくとも西側にいる限り、そうしたレッテルは至極まっとうなものに見える(もちろん植民地時代に行った西欧による野蛮の数々は完全に忘却されている)。
これによって、傭兵部隊や軍事請負会社が、アフリカで人権と文明を守るために「残酷」に活躍できる正当な根拠にもなるのである。しかし、こうしたレッテルは、貴重な資源を守るという経済的必要性によって生まれたものであることも、忘れてはなるまい。
軍事請負会社はどのように生まれたか
傭兵や軍事請負会社という制度は、今に始まったものではない。むしろ正規軍、すなわち国軍のほうが新しいのである。戦後生まれの私は徴兵を受けることのなかった世代であるが、私の父は徴兵を受け、中国戦線に赴いた。
とはいえ、私の海外の同世代の知り合いの中には徴兵で兵隊になったものが多くいる。今でこそ徴兵制度は日本以外でも減りつつあるが、まだまだ多くの国で徴兵制度は続いている。とりわけ冷戦構造が崩壊し、西側諸国が世界を支配して以降、もはや軍事に国税を注ぐ必要がなくなったことが徴兵制度廃止の理由である。徴兵のみならず、軍事予算も削られ始めた。
しかしその一方で、軍事の民営化が進んでいった。グローバリゼーションという市場原理は、国家の独占領域であった軍事部門にまで及び、今ではどの国も、私企業の力を借りないと戦争を遂行できなくなっている。
そもそも戦争と資本主義との関係だが、戦争経済学という分野すらある。戦争と収益性の問題を扱う学問である。ドイツの経済学者・社会学者であるヴェルナー・ゾンバルト(1863~1941年)が『戦争と資本主義』(1913年)の中で述べているように、植民地からの収奪の問題が絡んでいる。
不謹慎だが、歴史的に見て、手っ取り早く金を稼ぐには、他人のものを奪うにしくはないのだ。今も多くのアフリカの国々は、実質的にイギリスとフランスの支配下にある。そのためイギリスやフランスは、アメリカのように軍事基地をアフリカに数多くもっている。
もちろん国家単位で戦争に加担することは、侵略という国際問題に発展するので簡単ではない。そこで傭兵や私企業による戦争支援という手段が増えるのだ。
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