来年も猛暑?今夏がこんなにも「暑くなった」根因 日本人科学者が語る世界各地で起こる熱波の背景

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小坂氏は自然変動(自然の揺らぎ)と人由来で起こる地球温暖化の2つの影響を融合する研究に取り組んでおり、その功績は国際的にも高く評価されている。

2021年に公表されたIPCC第6次評価報告書・第1作業部会報告書の執筆者は、65カ国から総勢234人に上り、日本からは10名が参加した。小坂氏はそのうちの1人で、第3章(人間が気候システムに及ぼす影響)で主執筆者を務めた。

自然変動をもたらす例としては、エルニーニョ現象などの海水面温度の変動に伴う気温の変化のほか、太陽活動、火山噴火による影響もある。1991年にフィリピンにあるピナツボ火山の大規模噴火後の数年は、地球に達する太陽光が減り地球の平均温度が低下したことが知られている。

これに対して、人由来の温暖化は、経済活動に伴うCO2やメタンなどの温室効果ガスの排出や森林伐採による土地利用などによってもたらされる。一方、人由来でも、大気汚染をもたらすエアロゾルは、地球を冷やす効果があると言われている。

日本の「今夏の暑さ」の原因

小坂氏は、日本だけに関して言えば、今夏の暑さの主因は、偏西風の蛇行と熱帯地域における低気圧活動の影響の「合わせ技」だと指摘する。

これらは自然要因と考えられる。北半球の上空では、風が高気圧周辺では時計回りに、低気圧周辺は反時計回りに吹く。東西に連なる高気圧と低気圧に、中緯度の西から東に向けて吹く偏西風が加わると、南北に波を打ったように蛇行する流れができる。偏西風が北に張り出すところでは、高温な空気に覆われる。今夏の日本はちょうどその部分に該当する。

一方、地表付近では、太平洋高気圧の等圧線が、「クジラの尾」のように西の端で、日本列島付近へと張り出し、暑さをたらしているという。

もう1つの要因として、フィリピン周辺の熱帯地域で、熱帯低気圧が多数発生し雨量が増えると、同地域では低気圧気味になる一方、日本周辺は逆に高気圧気味になるという。これも太平洋高気圧の張り出しを強め、高温に拍車をかけているという。

他方、偏西風の蛇行は、日本だけではなく、南ヨーロッパからアジア、北米に伝播して熱波を発生させている。小坂氏は「これらは基本的には自然変動である」としながらも、「長期的な温暖化が気温を底上げしている」と語る。

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