夏のゴルフで「薄毛」に気づく人も、AGA治療の現実 年齢や状況によっては治療が困難なケースも

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また、フィナステリド、デュタステリドともに前立腺がんの腫瘍マーカー値(PSA)を下げることがわかっています。つまり、服用中はがんが見つかりづらく、見過ごされる可能性があるのです。

例えば腫瘍マーカー値が3ng/mlだったら、実際は倍の6ng/mlぐらいの値だと考えたほうがいいというわけです。検査の際服用していることを必ず伝えなければいけません。

ほかにも肝機能障害の副作用が明記されています。服用中は定期的な血液検査を行ったり、体調不良の場合はすぐに受診したりするなどの注意が必要です。

子どもが欲しい夫婦には悩ましいリスク

以前、治療で髪の毛が増えた患者さんが「私の髪を見て、妻が喜んでくれました」と、とてもうれしそうに報告してくれたことがありました。「仲のいいご夫婦なんだな」とほほ笑ましく思ったものです。

しかし、AGA治療にはお子さんを望んでいる、いわゆる妊活中のご夫婦にとっては悩ましい問題があります。それは特にデュタステリドでは、精子数、精子の運動率ともに20%程度減少した報告があることです。

精子濃度や精子形態には影響がなく、実際には妊娠率への具体的な影響はないと考えられていますが、妻が妊娠を希望しているのに夫がAGA治療を継続すべきかという葛藤はあるでしょう。

またフィナステリド、デュタステリドともに性欲減退、勃起不全などの性機能不全の副作用の報告もあります。妊活中のAGA治療については主治医とご相談ください。

また、どちらの薬にも「女性が錠剤やカプセルを触らないように」という注意書きがあるのは、男性ホルモンを調整する薬であり、経皮吸収(錠剤の成分が皮膚を通して、体内に吸収される)されることから、ホルモンバランスに影響する可能性があるからです。動物実験の結果からも、妊娠中の女性の服用によって男の子の胎児の外生殖器の成長、発達を阻害する可能性が示唆されています。

私のクリニックでフィナステリド、デュタステリドを処方した患者さんは、昨年1年間で145名に上ります。その数は年々増えており、年齢層も20代から70代まで年齢層も幅広いです。治療を続けて薄毛が改善してくると、どの患者さんもとても表情が明るくなります。

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