トップは「決断」ではなく「臆測」でモノを言う 間違いが判明したとき修正できる人は「まれ」

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シーメンスの立場から言えば、(この契約によって)IT関連の大プロジェクトが失敗する(昔からおなじみの)道理を再び持ち込まれたも同然だった。つまり、IT業者はユーザーの求めるものを提供せず、一方、その業者はユーザーの心変わりと不明瞭な発注内容を責め立てるというものだ。これはまさに、確かなものがないところで確かな予測を立てようとする兆候である。

BBCが最初におこなったブリーフィングには、息をのむほど数多くの下位プロジェクトが盛り込まれていた。その1つ、新たな《メディア・インジェスト・システム》は、BBCのエコシステムがコンテンツをどう取り入れるかを変えていくことを目指していた。これは新しいメディア資産管理システムによって補完されるものであり、そのシステムが将来のオーディオ、ビデオ、スチールを含むさまざまなコンテンツを管理するはずだった。

ストーリーボード制作も、従来の手作業ではなく、オンラインでおこなわれることになった。つまり、BBCの映像素材をすべてデジタル化し、統合されたデータベースのもとで、映像の制作・管理・保存・移動を一括しておこなうシステムを構築しようとしていたのだ。

ところで、BBCのプロジェクトチームは競争入札に付さずに委託契約を取り交わしていた。そして、主要業者であるシーメンスと他の委託業者との間には、(ある観察者によると)「隔たり」があったという。

「社運を賭けたプロジェクト」は失敗する

このことから、私たちは第2の未検証予測に行き着く。その内容は、これらのデジタル化プロジェクトをすべて一気に実行するのがBBCにとって不可欠であり、また、BBCにはその受け皿があるということだ。

これは特に危険な考え方だった。低レベルのデジタル技術しか備えていない組織であれば、小さなことから始めて、ゆっくりと年月をかけて必要な能力を培うほうがはるかに理にかなっている。アグレッシブに一大プロジェクトに取りかかり、そこに初めから全資産を投入するなど、大惨事への道を突き進むようなものだ。仮にプロジェクトがうまくいったとしても、それに見合った新たなワークフローを組織自体が開発することも、実行することもできないはずだ。

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