大人がハマる「新・月9」、吉田類の秘密 「酒場放浪記」はなぜ支持されるのか

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酒場というのは、やっぱり男性の聖地。あの空間に、女性独りで入っていくのは、本当に勇気がいるもの。だからこそ女性たちは、「店には入れないけれど、雰囲気だけでも味わいたい」と「吉田類の酒場放浪記」を見ているのかもしれません。

「おじさん独り」のほうがリアル

「吉田類の酒場放浪記」のヒットをきっかけに、BS各局で酒場番組が数多く放送されるようになりました。一時は、番組欄が「酒」だらけだったこともあります。

酒場番組が次々と生まれては消え、生まれては消える中で、生き残っている番組にはひとつの共通点があります。それは、出演者が、男性独りだということ。しかもホンモノの居酒屋の専門家です。

「吉田類の酒場放浪記」とよく比較される、「ふらり旅 いい酒いい肴」(BS11、毎週水曜夜10時放送)も、出演者は太田和彦さん(居酒屋探訪家)だけ。太田さんも全国の居酒屋探訪歴30年の第一人者。毎回、食通だけが知る地方の有名店を紹介しています。

「吉田類」と「太田和彦」の後を追って制作された酒場番組の中には、有名俳優やタレントが出演されていた番組もありました。ところが残念ながら、どれもそんなに話題にはなりませんでした。出演者がたくさんいると酒場を疑似体験する番組ではなく、トークショーになってしまうからです。酒場番組ファンは、酒場を疑似体験したいわけですから、トークショーには食いつきません。

やっぱり酒場番組には、その場に溶け込んでくれるおじさんが独りがいちばん。吉田類さんは途中から酔っぱらって何を話しているかわからなくなっている回もありますが、それもまたリアリティがあっていい。こういうおじさん、酒場には絶対いますから!

吉田類を肴に家で飲んでいると、テレビ番組というのはいろいろな活用の仕方があるのだなと思います。

かつて月9でトレンディードラマを見ていた世代が、BSの月9を見る。バブル世代も年齢を重ね、やっと地に足がついてきたのかもしれません。

佐藤 智恵 作家・コンサルタント 

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さとう ちえ / Chie Sato

1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして報道番組、音楽番組を制作。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。主な著書に『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか』(日経プレミアシリーズ)、最新刊は『コロナ後―ハーバード知日派10人が語る未来―』(新潮新書)。公式ウェブサイト

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