ターミナル駅から百貨店が消え去るかもしれない 大衆消費から富裕層やインバウンド向けに舵

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ということならば、沿線価値向上を追求すべき鉄道会社にとっては、ターミナルの商業施設として百貨店という業態はそぐわないと判断した、ということだろう。東急東横店の閉店から大きく変化した渋谷駅再開発を見ればわかるように、沿線の利用者(住民もビジネス利用でも)にとって、より利便性の高い複合商業施設に移行していくことが、鉄道会社の選択とならざるをえないのだ。

ターミナル駅前から電鉄系百貨店が消える日

今回話題に上らなかった東武百貨店池袋店、京王百貨店新宿店についても、すでに大規模再開発計画が発表されており、そう遠くない日に、営業は終了することになるとみられる。

これらの再開発計画においても、百貨店が新たな複合施設に再入居するというような表現は見当たらない。これが意味しているのは、近いうち、東京の電鉄系百貨店のほとんどが姿を消すということであり、そう考えると元電鉄系百貨店である西武池袋本店だけが百貨店として存続すること自体、想像しがたい話であることがわかるはずだ。

そして、電鉄系百貨店が消えた後は、大手百貨店による外商顧客争奪戦が行われ、いずれにしても呉服系大手が富裕層、インバウンドといった特定マーケットを再分割して、「富裕層、インバウンド専門店」として生き残る、そんな時代がくることになるだろう。新宿、渋谷、池袋といったターミナル駅前には百貨店、という風景が、過去の記憶となる日も近いのである。

中井 彰人 流通アナリスト

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なかい あきひと / Akihito Nakai

みずほ銀行産業調査部で小売・流通アナリストに12年間従事。2016年同行を退職後、中小企業診断士として独立、開業。同時に、慶應藤沢イノベーションビレッジでベンチャー支援活動を開始、近年は地方創生支援活動も実施中。並行して、流通関連での執筆活動を本格化し、TV出演、新聞、雑誌などへの寄稿、講演活動などを実施中。2020年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター、2022年Yahoo!ニュースオーサーを兼務。主な著書「図解即戦力 小売業界」(技術評論社)。現在、東洋経済オンライン、ダイヤモンドDCSオンライン、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+ITなどで執筆、連載中。

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