80歳超の店員さんも「八戸にある弁当屋」の正体 介護の新潮流「利用者が働く」デイサービスの凄み

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そこで昔からぬか床を持っている利用者が味付けし、絶品の漬物ができ上がると、今度はまた別の利用者がポツリと口にした。

「これ、おいしくできたから、売るべ」

この声に共感した池田さんは早速、保健所に加工業の許可を申請。真空機も調達し、漬物の商品化にこぎつけた。

東京まで皆で売りに行こう!

2017年には、味の異なる3つの漬物と、畑で採れた大豆を使った味噌も製作。これらの自慢の品を引っさげて、「東京まで皆で売りに行こう」と六本木・アークヒルズのマルシェに出店した。名付けて「東京行商ツアー」だ。

以来、この東京への行商ツアーが毎年の恒例行事になった。

畑で育てた完全無農薬の大根を漬物に(写真左)。利用者の一声で商品化につながった(写真:池田介護研究所提供)

「自分たちがつくった漬物をお客様が試食して『おいしい』と喜んでくれたり、買ってくれたりするたびに、皆さん目を輝かせていました。利用者さんが誰かの支えを得ながらも、自分の力で働くことで、“生きている実感”を持てる場をつくりたい。そう考え、『二重まる』を立ち上げました」(池田さん)

オープンして4年になるが、収益の面ではまだまだ課題が残る。デイサービスとしての介護保険収入が主体であり、お弁当やカフェ、漬物販売などで得られる利益は人件費や材料費などの経費を差し引くと、残る利益はわずかだ。

介助が必要な利用者が1~2時間程度、無理なく楽しめる形で働くことを考慮すると、現段階で支払える給金は、1回参加ごとに100円程度。毎日のように参加する人は、月2000円近くの収入になる。

少額かもしれないが、「自分には何もできない」と思っていた利用者にとって、自分の力で報酬を得ることは何にも代えがたいようだ。

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