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中国EVの開発期間短縮「チキンレース」のジレンマ。頻繁すぎるモデルチェンジで投資回収できず、安全性確保にも懸念の声

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中国自動車市場には2025年に167モデルもの新型車が投入されたが、見た目やスペックが似たり寄ったりのクルマが増えている(写真は鴻蒙智行のウェブサイトより)

「天下武功、唯快不破(世の中のいかに強力な武術も、圧倒的なスピードには敵わない)」――。

この古い格言は、現代の中国の自動車メーカーが信奉する“競争の掟”だ。メーカー各社は製品開発のスピードを上げ、競合他社に先んじて新型車を市場に投入することで、消費者の注目を集めてヒット商品を生み出せると固く信じている。

招銀国際金融の調査レポートによれば、中国市場では2025年に167モデルもの新型車が投入され、26年にはそれが173モデルに増加する見込みだ。世界の自動車市場を俯瞰しても、これほどの新型車ラッシュは中国市場以外には類を見ない。

その裏には、世界に先駆けて中国市場で起きた急速なEV(電気自動車)シフトにともなう製品開発期間の短縮がある。EVの構造は伝統的なエンジン車に比べてシンプルであり、車載電池のように事実上標準化された(メーカー系列を超えて共用できる)基幹部品もあるからだ。

デジタル技術で短縮加速

「中国メーカーでは、(マイナーチェンジを除く)完全な新型車の開発期間がおおむね2年間に短縮された。中には16~18カ月というケースさえある」。そう話すのは、財新記者の取材に匿名を条件に応じたある自動車メーカーの生産部門の幹部だ。

この幹部によれば、EVシフトに加えてデジタル技術やAI(人工知能)の急速な進歩が、開発期間の短縮をさらに加速させている。自動車の開発プロセスでは設計と検証に長時間の試行錯誤を要してきたが、最新のデジタルツールの導入により作業効率が劇的に向上したという。

実際、自動車メーカー各社は仮想シミュレーション技術を活用し、実物の試作品を用いたテストの回数を削減。設計、試作、テスト、修正、再テストの繰り返しに費やされる膨大な時間と手間を節約している。

その結果、中国メーカーは新型車の投入速度で外資系メーカーを圧倒し、国内市場における優位の確立に成功。中国ブランドの乗用車の市場シェアは25年には約7割に達した。これは(外資系ブランドが大きなシェアを握っていた)エンジン車の時代には想像もつかなかったことだ。

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