80歳超の店員さんも「八戸にある弁当屋」の正体 介護の新潮流「利用者が働く」デイサービスの凄み

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職員の給料日と同じ日に、社長の池田さん(写真左)から給与明細が直接手渡される (写真:池田介護研究所提供)

利用者自身が働くデイサービスは、ここ数年で増えてきている。代表的な例では、東京・町田市にある地域密着型通所介護事業所「DAYS BLG!」や、神奈川県小田原市にある「ブルーミングラボ小田原浜町」などがある。

「ブルーミングラボ小田原浜町」では、「働レク(わくレク)」と称した有償ボランティア活動を取り入れ、企業から受託した仕事を利用者が取り組む。利用者が書いた手紙のコピーをカプセルに詰め込む「じぃじ&ばぁばの便りガチャ」の製作をするなど、ユニークな仕事も請け負う。

要介護者のゆとり就労が国の財政に好影響

「誰かの役に立つことや、自分の活躍の場があることは人に生きがいをもたらし、元気にさせてくれます。介護が必要な方たちが毎日1、2時間程度の“ゆとり就労”ができれば、収入が得られるだけでなく、身体機能の改善向上によって医療費や介護サービスの利用料も減っていくでしょう。ひいては国の社会保障費の圧迫を防ぐことにもなります。

こうしたデイ施設をはじめ、介護が必要になる前の高齢者さんたちが地域の中で働ける場が増えれば、国の財政に好影響をもたらし、未来の子どもたちの負担軽減にもつながると思います」(池田さん)

働くデイ施設の増加は、介護する側の家族にとってもいい影響がありそうだ。自分の親世代が生き生きと働いている介護施設なら、子どもも安心して親を託すことができる。自分の仕事に邁進できるため、介護離職の防止にもつながるかもしれない。

2025年には、団塊の世代約800万人が75歳以上の後期高齢者になり、国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上になる。

要介護者が社会とつながり、生きがいを持って働くデイサービスの形は、超高齢化によるさまざまな問題を解決するうえで、1つのカギになりそうだ。

(前編:『デイサービスなのに「介護しない」利用者の本音』

伯耆原 良子 ライター、コラムニスト

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ほうきばら りょうこ / Ryoko Hokibara

早稲田大学第一文学部卒業。人材ビジネス業界で企画営業を経験した後、日経ホーム出版社(現・日経BP社)に。就職・キャリア系情報誌の編集記者として雑誌作りに携わり、2001年に独立。企業のトップやビジネスパーソン、芸能人、アスリートなど2000人以上の「仕事観・人生哲学」をインタビュー。働く人の悩みに寄り添いたいと産業カウンセラーやコーチングの資格も取得。両親の介護を終えた2019年より、東京・熱海で二拠点生活を開始。Twitterアカウントは@ryoko_monokaki

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