80歳超の店員さんも「八戸にある弁当屋」の正体 介護の新潮流「利用者が働く」デイサービスの凄み
同施設は、県内初の“仕事に特化した共生型のデイサービス”として、2019年に開業。介護を必要とする高齢者と障がいのある若者がともに働く、全国でも珍しいスタイルの施設だ。
デイ施設でありながら、店の看板には、「デイサービス」や「介護施設」などの文字はいっさい入っていない。
外観も店内も木のぬくもりのあるナチュラルな雰囲気で、おしゃれなお弁当屋さんといった印象。奥にはカフェスペースがあり、お弁当と同じメニューをランチとして提供している(現在は事前予約制)。
「お弁当を買いに立ち寄られるお客様の中には、ここが介護施設だと気づいていない方もいらっしゃいます。何より、利用者さんたちも、誰もデイだと思っていません(笑)。働きに来ているという意識なんです」と、介護職員の中村真由美さんは話す。
キリッと仕事モードに変わる、利用者たち
利用者たちは、朝、送迎で午前10時前にお店に到着すると、体温や血圧などバイタルチェックを行い、ゆっくりとお茶を飲みながら、その日やりたい仕事を選択する。
仕事内容は、お弁当の盛り付けや値段シール貼り、洗い物や掃除、メニューボード書きなどがあり、朝礼後にそれぞれ自分の持ち場につく。
午前11時半の開店に合わせ、いそいそと準備を始めるおばあちゃんたちの表情が少しキリッと、仕事モードに切り替わった。
お客さんが店頭に現れると、いの一番に「いらっしゃいませ!」と、声が華やいでいた。
昼食の準備も大事な仕事の一つ。味噌汁づくりから、ランチの盛り付け、配膳まですべて自分たちで行っている。
午後は入浴時間があるほか、農作業に出かけたり、おやつを手作りしたりと趣味活動に励む。
とはいえ、さまざまな介護度の利用者たちが生き生きと働ける環境をつくるのは、難しさや苦労も伴うだろう。
職員の中村さんは、「もちろん大変なときもありますよ! でも、その苦労も楽しいですけれど」と、屈託ない笑顔で返す。
例えば、本人が「お弁当の盛り付けをやりたい」と希望しても、それぞれ得手不得手があったり、病気の度合いによって手先が思うように動かせなかったりする場合もある。
そこで、いきなり希望どおりに仕事を任せてしまうと、実際にできなかったときに本人が落ち込んでしまうこともあるのだ。とくにその作業が昔から得意だった人ほど、プライドややる気がくじかれてしまう。
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